第17章 正体
影山くんが休んでいる間に物理の課題のレポートに取り組む。
物理のクラスは今週終わるので、結構しっかり目なやつ。
物理というのは、どうしてこんなにも難解でそして、おもしろいのだろう。
なんでこんなにも遠回りをしながら、
当たり前なことを当たり前であると立証しているのだろう。
それによって当たり前が起きなかった当たり前の理由も立証できて本当に。
人間に対しての愛おしさが湧いてくるほどに、かわいらしい分野だと思う。
夕飯の仕込みは昨晩と今朝でしてあるので、
ある時間全部使ってレポートに取り組んだ。
食後に、今日の復習と明日の予習をすればいい。
・
・
・
「…水、ありがとうございました」
『…あ、影山くん。 少しは休めた?』
「はい、休めました。 …だるいの抜けてはいないんすけど」
『うんうん、そうだよね。 あ、ストレッチ、する?』
「…いいんすか? でもなんかやってることあるんじゃないんすか」
レポートはかなり進んで、もうすぐひとまず書きおえる。
今は締めの節をガーっと書き上げているところだった。
そんなわけで集中していて影山くんが来たことにすぐに気付かなかったからかもしれない、
影山くんはそんな風に気遣いの言葉をくれた。
『うん、もうすぐひと段落。 少しだけ待っててもらえる?
その後ストレッチして、それからご飯にしよっか』
「はい」
『うん。 好きなところで、好きにしててね』
「はい」
勢いを止めたくないので、
すぐにパソコンに目を戻し、続きを進める。
影山くんは一度立ち上がってどこかへ行ったと思ったら
戻ってきてソファの方に座るのが視界の内に入った。
その手にはバレーボール。
スマホでも本でもなく、やっぱりバレーボールなんだよなって
頭の片隅で思った。