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【ハイキュー】 続・波長 【孤爪研磨】

第17章 正体








「LAボーイ、列違うよ」

「ここは米国市民の列。君はあっち、外国人用の」

「マジかよ…、もうそれ聞きたくねーんだけど」

「わかったわかった、もういいって、十分。国内線への乗り換えは手伝ってやれる。
でもな、まず入国審査抜けないとなわけ、わかった?」

「…はぁ、全然わかってねー。日本人であってる?」

「誰かこいつのこと助けてやれるやついねー?
日本から来たんだけど、ここ並んじゃってて、んで俺の英語全く伝わんねーの」






男の人がうんざりしていたのは影山くんが仕切りに唱えていた呪文のことらしく。
そして会話を随分鮮明に覚えているね、と思ったらジュノは列の真隣くらいにいたらしい。

UScitizenの方はそんなに長蛇の列にはならない、
サクサクと進んで行くから、
その最後尾にいた影山くんと真隣くらいの位置にいたってことは、
foreignersの列ではもう結構並んで、だいぶ進んだ辺りのことだと思った。

そこから列を抜けて、影山くんに寄り添って一緒に最後尾に行ってくれたんだな。
ジュノってば優しいなって、思った。

それは、影山くんも言っていた。








「…そっすか。なんか俺…すげー助けられてここまで来ました」

『…うん、素敵だね。なかなか日本にいるだけだとできない経験ってあるよね。
一人でじゃないとできない経験もあるし…』

「日本からの飛行機に乗ってたから結構日本人いたはずなんすけど…
助けてくれたのはあのアメリカ人とジュノだった」

『うん、まぁ、みんなそれぞれ事情があるだろうし…よかったね』

「ぅす。チケットも菅原さんにとってもらって、
サンフランシスコに着いて終わりじゃないって忘れないようにさせてくれたのも菅原さんっす」

『…菅原さん!お元気だった?』

「はい、すげー元気そうでした。あと、やっぱ優しいしすごいっすあの人」

『………』

「説明わかりやすいし…」







影山くんを影山くんたる存在にしたのは
圧倒的なバレーのセンス、でもなく
誰よりも強いバレーへの想い、でもなく
いやそれはベースに堂々とあった上で、
この、自分に足りないものを持つ人への純粋な眼差し、
得た経験を自分へ還元していくという思考、取り込もうという姿勢…
うまく言えないけど、何かそういうものがあるのかな、とか改めて。







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