第17章 正体
ー穂波sideー
影山くんとジュノを後ろに乗せて車を走らせる。
影山くんはほぼ全くと言っていいほど、英語が理解できていないようだった。
でも、影山くんなりに話題を提供したりしてみていて、
その様子は控えめにいっても、とっても愛らしかった。
そして、たまらず吹き出すことが1時間のドライブの内に3度あった。
ジュノがカメラをやってること、静止画より動画を撮るのが好きなこと。
韓国人であること。 タトゥーのデザインは自分でしてること。
影山くんの一個上、わたしと同い年、19歳であること。
その辺りはジュノの日本語を交えたコミュニケーションのおかげで理解しているようだった。
一方ジュノは、
影山くんがバレー馬鹿であること、セッターであること。
おそらく頭がクソ悪いこと(ジュノの言い方をそのまま使うと、ね)
そして、
「my goal is 穂波さん…笑」
影山くんがわたしを慕ってくれてること、はわかっているようだった。
つまりは影山くんは自分のことを話すのではなく、
ジュノの話を聞き出そうと色々してみていたのかな、
車内だけでなく、飛行機でも、って思って一層愛しさが増した。
「あ、穂波さん… ジュノに、あの男の人がなんて言ってたか覚えてるか聞いてもらえませんか」
『…あの男の人。 あぁ、列違うよって教えてくれたっていう?』
「列違うよって言ってくれてたんすよね、そうっす、その」
『hey Juno, do you remember what that guy told Tobio when he’s in wrong line?』
中学生くらいの英語にできてるかな、と思いながら、少しゆっくり目にジュノに話しかける。