第16章 釘
ー穂波sideー
数日分まとめて買いたいところだけど、
とりあえず今は侑くんと食べる分、って絞って。
それでもバッグ2つ分を購入。
侑くんが2つとも持つって言ってくれたけど、
1つずつ持って車に戻る。
『…笑 侑くん、そっちじゃない』
後ろに荷物を積んで、運転席に行こうと思ったら
ドアを開けて乗り込もうとする侑くんがいて。
「あ、間違えた。助手席って思ったらこっち来てまう」
『わかるよわかる』
「…ならせっかくやで」
ドアを広くあけて、こちらへどうぞ、みたいな動作をお上品にして車内に案内してくれる。
『…ありがとう 笑』
「いうて、運転席 笑」
『あはは!ほんとそれ、案内する先運転席っておもしろいね 笑』
ケタケタとなんでもないことで笑いながら、車に乗り込んで。
家へと向かう。
『…侑くん、目的地はわたしって言ってくれた』
「ぉん、そやで」
『それも踏まえた上で、何かやりたいこととか行ってみたいとことかイメージ、ない?』
「…それな、なんもなかったんやけど、さっき見つかってん」
『お。聞かせて?手伝えることがあればできる限りしたい』
「ほんま?穂波ちゃんがそう言ってくれたら助かるわ」
時間もお金も使ってはるばるやってきてくれたんだもの。
できるできないは置いておいても、
わくわくしたイメージはいくらでも湧いてくるはず。
わたしがいることでなにか一つでも実現できるならしたいと思った。
「…俺な、ごっこ遊びしたい」
『………』
「………」
『…え?』
「やからごっこ遊び」
『…いやそこもうちょっと説明するとこ 笑』
まさかの、ご返答に。
空白ののちにおかしさが込み上げる。