第16章 釘

ー侑sideー









伸びやかな女の人の声で
発音も聞き取りやすくて
初めて聴いたのになんや物語が目に浮かぶみたいな曲で。

今流れとるその後の曲もそんな感じやし。

雰囲気はなんか、子供向けとかどこかメルヘンなんやけど、
そう思っとったらなんか、なんていうんやろ。
いや全然やん。みたいな。

バランスが絶妙で聴き入ってまう。










でもさっきのバビロンいう曲はパンチがあった。







２人の男女か同性かは知らんけど、
カップルがおって。



話し合って　確かめて
理解して　推し量って
受け入れて　歩み寄って
抱き合う。






って流れやった。
２人で交互に歌っとるから
話し合っとるんが一人。
確かめとるんがもう一人の感覚みたいな感じにとれた。








見つめあって　感じ合って
目を閉じて　手を伸ばして
横になって　服を脱いで
暗くして　熱くなって






もうこんなんこれからの俺らやん、ってちょっと想像した。

そしたら







手なずけて　分かり合って
支配して　分かち合って
もてあそんで　信じ込んで
裏切る。



ってめっちゃすれ違いいうか、温度差出てきて。




手をつないで　殴り合って
口づけて　唾を吐いて
愛し合って　殺し合って
添い遂げて　焼き尽くして
やり直して　立ち直って
作り出して　また壊して
繰り返す　繰り返す　それだけ。










やって。










やり直す　立ち直る










いう掛け合い。
女の人がやり直す　言うたら
男の人が立ち直る　言うねん。

ゾッとした。

ほーか、やり直せてんな思ったら
相手は立ち直ってきた、くらいのとこでもう、
こっちのことはどうでもいい状態とかあるやんなって、
むっちゃ優しい感じのトーンでどこか淡々と歌っとって。






ここまでくると穂波ちゃんがどうとかちゃうくて、
なんやよくわからんけど、色々大切にせなあかんなとも思った。
すれ違いって簡単に生まれそうや。
あと無くした信頼ってそうそう簡単には取り戻せんよな、とも。











…それは、研磨くんと穂波ちゃんの間でも普通に起こりうることなんやろか？