第2章 ふたり
ー研磨sideー
5月11日(土)
午後からオフ。
明日が母の日だってことで
前に穂波と約束してた燻製をする。
おれは部活終わり、
穂波はレッスン終わりに駅で待ち合わせて、
駅でチーズとナッツを、
それからいつもの商店街の魚屋で鯵の干物を買って帰る。
鶏肉とか卵とかはもう下処理は済んでるらしい。
スモークサーモンは時間がかかるから今回は断念。
穂波ん家に着くとまず腹ごしらえ。
ラーメンが食べたいね、ってなって
ちょうど北海道土産のがあるからそれ食べようって。
さっと味噌ラーメンを作ってくれた。
トッピングはもやし、ねぎ、
それから燻製用に漬けて乾燥させてた味玉。
乾燥させてたからちょっと白身が硬い気がしたけど、美味しかった。
副菜に作り置きの人参の胡麻和えと、春菊のサラダ、冷奴にネギだれ。
『白身ちょっと硬かったね。横着と欲張りをしてしまった』
「横着と欲張り?」
『茹で卵を作らない横着と、味玉が食べたいという欲張り』
「…ふ 笑」
燻製するためにこんな風に下準備してくれて、
ラーメンにも副菜をさっと用意してくれて、
全然横着だなんて思わないけど。
まぁいいや。
横着と欲張り。
穂波が言うとどこか間抜けでおもしろい。
シゲさんの友人で燻製好きの人は
自家製の燻製窯みたいなのでやるらしいけど、
今日は穂波ん家にあるアウトドア用の燻製器で。
ロゴスのやつ。
ナッツ、チーズ、卵、チキン、鯵の順番でするって。
穂波は本を読みながら、
おれはゲームしながら時間を潰してるんだけど…
最初にできたナッツとそれからチーズが、止まらない。
やばい。
『まずいな、止まんない』
「…うん、でももう避けてあるんだよね?」
『………』
「あれ、避けてない?」
『ううん、避けた。でももうなくなっちゃうなって、つまみ食い用が』
「…だね、でもそろそろ止めなきゃだしちょうどいいよ …多分」
『…ん』
タイマーがなって、くん玉が出来上がった。
「………」
『…味見、する?』
「うん」
よくわかんないけど、
なんかちょっと悪いことしてる気がするのは何でだろ。