第42章 その瞳に映る物
「でも、俺の
日輪刀の色なんかよりも。
あげはさんの日輪刀の、
七色の色の方が珍しいんじゃ…」
その炭治郎の言葉に
あげはがふふふと笑った
「お館様がね、
過去の記録からも、後にも先にも
日輪刀を七色に染めたのは
私だけだって、仰っておられたけど。
色もだけど…この鏡面の様な輝きも…ね。
私の事、特別に選ばれた子だって…
そう言ってくれたの…」
水の呼吸 雷の呼吸
そして 炎の呼吸と その派生の恋の呼吸
その先に微かに混じる 風の呼吸の色
自分の脇に置いていた日輪刀を
あげはが手に取ると
その鞘から抜き取り
その刀身を炭治郎の方へ向けた
「あの時、杏寿郎さんが話していた
基本の呼吸…。炎、水、雷、岩、風、
それぞれ炎なら赤、水なら青
雷なら黄色、岩なら灰色、
風なら緑に日輪刀は染まる」
あげはが畳の上に
数枚広がっていた紙の上に
禰豆子がお絵かきに使っていた
クレヨンの中からそれぞれの呼吸に
対応する色を取り出すと
グリグリと色を塗り重ね始めて…
「私が思うに…だけど、
炭治郎君の刀が黒く染まっている事。
そして黒刀の剣士が、どの系統を
極めたらいいのか分からないと
言われている由縁は…、
多分なんだけど…、これじゃないかって」
スッとクレヨンの色を塗り重ねた紙を
あげはが炭治郎の方へ向けると
ゴクリと炭治郎が固唾を飲んだ
「あの、あげはさん、これ…」
「あくまで、私の個人的な憶測での
範疇に留めて置いて…。
槇寿郎様なら、何か
炭治郎君のその特別な呼吸について
ご存じだろうから。
私の話は聞き流しておいて。
あの呼吸の音を聞いた時、
何となくだけど深いなって感じたの」
「呼吸が深い…?
ヒノカミ神楽がですか?」
スルスルと禰豆子が後ろから
炭治郎の脇の間に入って来て
その膝の上に陣取ると
持っていたクレヨンであげはが
先程塗り重ねて黒い丸が出来ている
その紙に落書きをし始めてしまった
「あ、こら、禰豆子。
やめなさい。やめるんだ」