第42章 その瞳に映る物
「ぬはははははっ!あげる!
本当も何も、あれだかんな!
俺と、紋逸でギョロギョロ目ん玉の
履いたまんまだった、草履
脱がしてやったからな!!
紛れもない事実だぜ!当然だ!!」
伊之助のその言葉にあげはが
杏寿郎の方を見ると
杏寿郎は居心地が悪そうな様子で
こちらから視線を逸らせて
自分の手で顔を隠す様にして覆っていて
「嘴平少年…、俺は君のその
純粋な素直さを恨みたい気分だ…。
あげは、頼む。今は…その、
こちらを見ないでくれると助かる…。
兎に角だな、その、君が無事で良かった」
いつも冷静な杏寿郎が
私が倒れたって聞いて
買って来た物も玄関に置いたままにして
履物を脱ぐのも忘れて
私の事 心配して見に来てくれたって事…
「んぁ?あげる、お前…
もしかして、ほわほわしてんのか?」
「杏寿郎、ありがとうございます。
杏寿郎に、そこまで
ご心配して頂けるなんて。
私は、幸せ者にありますね。
でも…、
お礼も言わなければなりませんが…。
お詫びもせねばなりませんね。
杏寿郎、ご心配をお掛けしてしまい。
申し訳ありませんでした…」
そうあげはが穏やかな笑みを浮かべながら
杏寿郎に対して素直な感謝の意を伝えて来て
「あげは、お礼もお詫びも…
俺としては、違う形で受け取りたいのだが?」
「え?言葉では伝わらないと言う事に
ありますでしょうか?杏寿郎」
スッと杏寿郎の手があげはの頬に触れて来て
「あの、杏寿郎?」
「言葉だけでは伝え切れない物まで
言葉以上に…、欲張りたいと言えば?
俺としては、今の感情を君と
分かち合いたいと思って居るんだが…」
頬に触れた指先が
頬を撫でて行く
ツンとその指先が唇に当たって
「あの、杏寿郎…、分かち合うと
言うのは…その、今は…あのッ…」
ハッと炭治郎がある事に気が付いて
「善逸、伊之助っ、急げっ!!
こっち向け!壁の方だ!
それも今すぐに!!急ぐんだ!」