第42章 その瞳に映る物
炭治郎にはこの匂い
キツイと思ってるんだろうなぁと
善逸はそう考えながら
しかめっ面の炭治郎の顔を見ていた
炭治郎からすんごいっ
不快な音がするもんな
もう一度 気付け薬をあげはに
杏寿郎が嗅がせると
あげはの目の焦点が定まって
今度はしっかりと意識を取り戻した様だった
「うぅ、
…頭が痛い…し、クラクラする、
あれ?私、何でここに居るの?
確かあの時…、中庭で…炭治郎君に…」
キィイイイイン…ーー
呼吸を使って居ないのに
鏡の呼吸を使って居る時の音がして
スッとあげはの左目が銀色に輝き出して
その左目の表面が鏡の様になると
そこに一瞬一瞬の映像が次々に映し出される
どういう事だ 映し取るだけでなくて
見ている者にも
映像を見せる事が出来るのか…?
今まで この型を使っているのを
何度か 見た事があるが
この様な事は 一度も無かった…
「あげは?これは君がやって居るのか?」
「あげはちゃん?」
「父さんだ…」
炭治郎が何かに気が付いて
そうボソッと声をあげた
「あん?お前の父ちゃんが
どうしたって言うんだよ?権八郎」
「今、あげはさんの鏡の目の中に
…色んな映像が見えたけど…
俺、見たんです。見えたんです。
その中に、俺の父さんが
…居たんです。間違いありません」
「どう言う事だ?何故あげはの
目の中に出会った事もないはずの、
竈門少年の父上が映し出されるんだ?」
うむと唸り声を上げながら
杏寿郎が顎に手を添えながら考え込むが
答えらしい答えは見つかりそうになかった
「でも、恐らくは
…あげはさんの身体に
異常が起こったのは、俺の使う、
ヒノカミ神楽を鏡の目で映してからです。
だから、俺があんな事を
言いださなければ…ッ、俺の所為なんです」
そう申し訳なさそうに
炭治郎が言って来てギリッと
拳を強く握りしめる