第42章 その瞳に映る物
遅れて来た春日に対して
「春日さん。お布団を
用意して貰ってもいいかしら?
あげはちゃんを、休ませてあげたいから」
「はい、只今。少々お待ちを、
一番近い部屋に布団の準備を致しますので」
そう言って春日が母屋の中に戻ると
中庭に面している広間の中央に
布団を運んで来て用意をしてくれて
「お待たせいたしました。蜜璃様。
こちらに鏡柱様を…」
「あげはちゃん、
ちょっと揺れるけど許してね」
ひょいと重さもない様に
軽々しく蜜璃が
あげはの身体を抱きかかえて
そのまま 広間まであげはを
横抱きにしたままで運んでいくと
春日が用意した布団に
あげはの身体を横にさせる
「あの、蜜璃様。お医者様を
お呼び致しましょうか?」
そう心配そうな面持ちで
春日が屋敷の主が留守な今
蜜璃にその判断を仰いできて
蜜璃があげはの顔を覗き込んで
そのいつもよりも浅い呼吸の音に
自分の耳を傾けている様だった
「ううん。大丈夫みたい。
お医者様は要らないわ、
春日さん。安心して」
善逸もある事に気が付いて
その表情が明るくなる
「あっ、この音!甘露寺さん。
回復の呼吸…、してるっ。
はぁ、良かったぁ~。
さっき、長い時間
あげはさん息してなかったから」
「え?息をしていなかった??
ちょっと、何があってこうなったの?
どうしてあげはちゃんは、こんなに
消耗しちゃってるの?
それに、目から血が怪我してるの?」
炭治郎が伊之助の肩を借りながら
広間の方まで歩いて来て
重たい身体を引きずる様にして
あげはの寝ている布団の所まで来る
その様子を蜜璃が見て
「それに、炭治郎君までどうしたの?
炭治郎君は…どうして動けないの?
さっき稽古してた時は、
あんなに元気だったじゃない」
「甘露寺さん、俺が悪いんです
…俺があげはさんに、
ヒノカミ神楽を…鏡の目で
見て欲しいなんて言わなければ…」
ヒノカミ神楽と言う
聞きなれない言葉に蜜璃が首を傾げた
「ゆっくりでいいから、
炭治郎君、お話…してくれる?」