第42章 その瞳に映る物
「ねぇ、ねぇってば!…あげはさん?
あげはさん、目を開けて欲しいんだけど、
しっかりしてよぉ~、頼むよぉ~。
ね、ね、大丈夫??ねぇ?どうしよぉ~、
炭治郎ぉ。起きないんだけど?
どうしたらいいの?どうする?ねぇ?」
善逸があげはの周りを
うろうろと行ったり来たりしていて
「オロオロすんじゃねぇ!紋逸っ!
オイ!しっかりしろ、あげるっ!」
その様子に苛立ちを露わにして
伊之助が声を張り上げた
「どうしよう?俺の所為だ
俺が…あんな事、言い出さなかったら。
俺の所為…だ、こんな事になるって
何も、考えもしないで…ッ。俺」
その場に倒れ込んだままで
炭治郎がそう悔やみながら漏らして
「馬鹿っ、今はそんな事
言ってる場合じゃないでしょ?炭治郎。
炭治郎の所為じゃないでしょ?
俺、誰か呼んで来るから、
炭治郎は休んでて」
ヒノカミ神楽を使って
動けなくなっている炭治郎に対して
善逸がそう言い残すと
シィイイっと雷の呼吸をして
その場から 既に居なくなっていた
その頃応接間では
ガラステーブルに春日が紅茶を置いて
蜜璃に対して急な来客用にと置いていた
マドレーヌを皿に山盛りにして出した
「わぁ、貝殻の形をしてるお菓子ね。
とぉーっても可愛らしいわ、
食べちゃうのが勿体ない位。
きゃーん♪でも美味しそうだわ」
「ええ、どうぞ。まだありますので。
ある分、蜜璃様が
お召し上がりになって頂いて結構かと。」
「頂きまーす。でも、楽しみだわ、
だって、いよいよって感じがするもの。
あげはちゃんと、煉獄さんが
結婚するって言うのは知っていたけど。
全然実感がなくて、
夢でも見てるのかなって」
用意していた角砂糖を5つ
蜜璃がドボドボと紅茶の中にいれて
ティーカップの底に砂糖の層が出来て行く
それを構う様子もなく
蜜璃がそれをティースプーンで混ぜて
「それは、蜜璃様。
春日も同じにあります。
今まで、炎柱様には
恋人がいらっしゃる素振りの
ひとつもございませんでしたし。
その様なお相手が、いつか…と
使用人一同思っておりましたが」