第42章 その瞳に映る物
見てはいけない そう見ても…
私には 使えないからだ… 足りない そう
私には足りない…
そうか… わかった事があった
炭治郎君の日輪刀が黒い…理由…そうか
黒刀の剣士がどの系統を極めたらいいか
分からないと言われているその真意
それと同時に ヒノカミ神楽が
体力を異常に消費する その理由も
そして炭治郎君が あっという間に
複合呼吸と二段呼吸を体得した理由も…
その時 グッと 自分の胸が詰まる様な
そんな感覚がして
違和感が身体にあるのに気が付いた
「あげはさんっ!!
ちょっとぉ、息っ、息してないからっ!
そんなに長い事
息止めてたら死んじゃうからっ」
善逸の必死の叫び声が
どこからか聞こえて来て
ガッと善逸が立ち尽くしたままの
あげはの肩を掴んで揺する
私 息 してなかったんだ…っと
その声に現実に引き戻されて来て
どこか分からない場所を見たままの
あげはの目にフッと焦点が戻って来て
色が無くなっていた世界に
一瞬で色が戻って来る…
ヒュウ…っと止めたままにしていた
呼吸を再開させると
そのまま 口元を押さえてあげはが
ゲホッゲホと激しく咳き込みだして
息を吸うのも吐くのもままならなくなって
そのまま ふっと意識を手放してしまった
「ちょ、あげはさん?」
「うおっ、危ねぇ!あげるっ!!」
プツン…と
糸が途切れた 操り人形の様に
その場でそのまま
倒れ込んだのを伊之助と善逸が慌てて支えた
身体…重たい…
目を通して”視て”いただけなのに
身体が鉛みたいに重たい
指の一本も動かせない
瞼…を 開くのも 出来ない…
重い… 何もかもが重い…
でも 薄れて行く意識の中で
誰か 誰かの声がしたんだ
私が鏡を通して見たその誰かが
誰に対して言った言葉なのかは
わからないけど
その優しく響く声は…少し
透真さんに似てると
そう思った