第42章 その瞳に映る物
本能が
それを止める様な そんな気がして
それを 使おうとするなと
何かが止めている
そんな気がしていた
「鏡の呼吸 参の型 鏡眼」
あげはの左の目が銀色に染まって行く
ゴォオオオオッ
炭治郎の呼吸の音が変わる
深い深い身体の いや
地面の奥底から湧き出て来る様な呼吸
スッと炭治郎が日輪刀を構える
「ヒノカミ神楽…、円舞」
炭治郎が炎を纏いながら
弧を描いて 日輪刀を振りぬいた
あれ?この呼吸…もしかして
自分の鏡眼を発動している
左目の視界が一瞬にして
真っ白になると
ここじゃない どこかに居た
「…っ、ここは、どこ?」
真っ白の世界 何も無い様な
そんな真っ白の世界が見えて…
伊之助があげはが呟いた声に
気が付いて
「あん?あげる。なんか言ったか?」
伊之助の問いかけには
あげはからの返答がなく
虚ろな目をしながらぶつぶつと
独り言を呟いていて
様子がおかしいと気付いた伊之助が
あげはに呼び掛ける
「あげる?どうしたんだよ?あげる」
ここはどこ? 真っ白…
いや 違う 私は居るんだ…
炎屋敷の庭に居る
実際の目に映る光景に 別の光景が
重なって見える
だったら これは…?
私にこれを見せてるのは…ッ
そして 真っ白になっていた視界が
今度は真っ赤に染まって
鏡眼を発動している
左目から出血してるのだと気付いた
これ以上… 目を通して アレを
見てはいけないのだと…そう 悟った
真っ白の世界の その奥にある世界を…
全てを切り離した 世界の奥を…