第6章 無限列車にて 後編
「禰󠄀豆子ちゃん…」
私の…心の中の動揺が
外へ出てしまっていたのか
禰󠄀豆子ちゃんに心配を
させてしまっている様だった
「ごめん、ありがとうね…」
出血 もう 押さえていなくても
良い位に落ち着いて来たな
「善逸君なら大丈夫。
出血、止まって来てるから」
あげはの言葉に禰󠄀豆子の表情が明るくなる
新しいガーゼの束と
汚れたガーゼを交換すると
裂いたサラシをきつく巻いて固定する
こうしておけば
もう手で圧迫する必要もないだろう
スッとあげはがその場で立ち上がった
グイッと下から逆の力で引っ張られる
その力の方を見ると
禰󠄀豆子があげはの羽織の裾を
ぎゅっと握りしめていた
不安そうな面持ちで 私の顔を じっと
物言いたげな目で見つめてくる
「ごめんね。禰󠄀豆子ちゃん、善逸君の事、
禰󠄀豆子ちゃんに頼んでもいいかな?
…私は、前へ、この先へ…
行かなくちゃいけないから…!」
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ハァッ ハァッ
杏寿郎は肩で息をしていた
人の体力には限界がある
戦いの中でじわじわと
疲労が蓄積して来ているのを感じる
ー柱ーが 人並み外れた肉体を
有していたとしても
それはあくまで
人間の中での…話であって
鬼とは違うのだ
両腕を杏寿郎の一刀を受けて断たれて
その切り口からは
ボタボタと血を
滴らせているのにも関わらず
猗窩座と言う名の鬼は
涼しげな顔をしていた
疲労の色など微塵にもない
当然だ 鬼なのだから
途切れる事のない
息を継ぐ間もない様な
猛攻の中で 向けられ来る拳を
身を翻して回転しながら
かわして行くと
「炎の呼吸 壱の型 不知火!!」
至近距離から技を
打ち込んで叩き込む
ザンッ 両腕でそれを
受けようとした猗窩座の両手首が
切り落とされれる
猗窩座はそれを笑みを
浮かべながら見下ろすと
すぐさま両手を再生させて
拳を繰り出した
何度も 何度も両腕を
切り落としても 流石の上弦
回復再生のスピードが 段違いだ
あげはが横倒しになった
客車の先の更に先
機関車の動力部の横を駆け抜けて行く
その機関車の更に先に…
人影が二つ…見えた
あの市松模様の羽織 炭治郎君だ
その炭治郎の隣には伊之助の姿もあった