第41章 羊羹と羽織
なら 俺に出来る事があるのなら…
それは…
「あの、すいません。父上?
お待たせをしておりましたか?」
千寿郎の言葉に槇寿郎が
現実に引き戻された
千寿郎が自分の分の茶を持って戻って来て
槇寿郎は首を横に振った
「ああ、いや、待ってはいない。
こっちに来なさい。茶を飲もう」
縁側に2人で座布団を並べて座ると
しばらく無言のままで茶をすすった
千寿郎が何かを話した方がいいのかと
そう思って居た頃に
槇寿郎の方が先に口を開いた
「ああ、そうだ、千寿郎。
離れの戸を開け放って、
風を通してある。離れの
掃除も望月に依頼してる…。
杏寿郎とあげはが家に来るからな」
「ええ?それは父上、本当にありますか?」
明らかに嬉しそうな顔をしている
千寿郎の顔を見ると
槇寿郎も自然と笑みが零れた
「それで、父上。兄上と姉上は
いつこちらにいらっしゃるのですか?」
「明後日だが、
千寿郎お前に聞きたい事がある」
「は、僕に…にありますか?」
「俺は、将来的にあの2人に
家に戻って来て欲しいとそう考えている。
だが、千寿郎、お前もその…色々と
感じる事の多い年齢だからな。
その、あれだ。杏寿郎とあげはが居ると、
お前が居心地が悪くなるのではないかと、
俺は心配しているのだが…」
「いいえ、そんな事はあり得ません!!
僕は嬉しいです、兄上と姉上と家で
一緒に過ごせるなんて…、夢の様です」
そう槇寿郎の問いに
千寿郎が力いっぱい答えて来て
その嬉々とした様子を見ていると
槇寿郎の心配している部分が
千寿郎には伝わって居ないとそう悟った
「いやな、千寿郎…。
あの二人は夫婦になるんだ、
その当然子供だって…な。
その内…と、言うか、
あの杏寿郎の事だからすぐにでも
出来る事だろうし…な、その…」
子供と言う言葉が槇寿郎の口から出て
千寿郎の顔がぱぁっと明るくなる