第41章 羊羹と羽織
あの頃のアイツには 透真が居たからだ
三上 透真…
あの男なら あげはの抱えている過去も
心の奥底にある傷も
その全てを無条件に受け入れて
愛せる男だとそう思ったからだ
だから 長らく
あの時あげはにした話その物も
忘れてしまって居たんだ 俺は…
あげはは
アイツは透真と一緒になるとばかり
思って居たからだ 疑い様のない程に
あの2人は仲睦まじかった
見ているだけで 心が穏やかになる程に
似合い…だったんだ
あげはと透真は…
杏寿郎には あげはは手に余ると
ついあの時 杏寿郎には言ってしまったが
三上透真は… 素晴らしい柱だった
柱としての才覚に満ち溢れていた
その天性の才能に満ちた
水の呼吸もさることながらに
彼自身が持つ 陽だまりの様な
人を自然と惹きつけるその人格
俺は知って居たからだ
全てに対して平等に受け入れる
それも自分の利益不利益を顧みない
まるで 仙人みたいな奴だった
大分俺より 年は下だったが
どこかしら浮世離れしたような
アイツだけが違う世界に居る様な
そんな奴だった…な
「透真。どうしてお前は…、
あげはの手を放したのか…。
お前は、あれほどまでにあげはを
大切にしていたと言うのに…。
どうして、そんな道を選んだ…お前は」
彼と共に任務に出た時の事を思い出した
もう その頃の俺は
任務の時にも酒が断てずに居た
だが アイツは 俺に何も言わなかった
言わなかっただけじゃない
『槇寿郎さん。
もう、柱…辞めちゃうとか。
僕はいいと思いますよ?そうしても、
心配しなくても、どんどん新しい剣士は
鬼殺隊に入って来てる、
才能のある隊士も居るから。
それに、炎柱が途切れたとしたって。
数年位ならいいんじゃないかな?』
そう緊張感の欠片もない調子で
俺にアイツが言って来て