第41章 羊羹と羽織
「この頃は、
あげは様のお言葉回しも
杏寿郎様に似て来ておいでだ。
夫婦は似て来るとは良く言いますが…、
ご夫婦になる前から似て来ておいでで」
「そっ、そんな事はありません…よ?
工藤さん、何を仰って
私と、杏寿郎さんが似てる等…は」
そう否定するあげはの姿に
杏寿郎の姿が重なる
ー『そっ、そんな事ある訳ないだろう?
工藤、何を言っているんだ?
俺と、あげはが似てる…等…と』ー
ふっと工藤が口元を緩めると
「短い期間ではありますが、それだけ
お二人が近くに居られると言う事。
自然の事にあります。似て来るのは」
うーんとあげはが自分の顎に手を当てて
何かを思い返している様だった
「でも、確かに…杏寿郎さんの言い回しは
独特に在られますから、自然に移って
似てしまって居る…のかも知れません。
その内、大声で、
色々言ってしまわない様に
気をつけて置きますね。
ありがとうございました。
工藤さんも、お忙しいでしょうのに。
お時間を取って頂いてしまいまして…」
「いえ、工藤もあげは様とお話を
ゆっくりとする事が出来て
有用にありました。私からも炎柱様を、
お願いいたします。あげは様」
「それは、工藤さん。
末永く…にありましょうか?
それでは、杏寿郎さんがお戻りになる前に
私は、戻らせて頂きますね」
深々と工藤にあげはが
頭を下げて 部屋を後にする
ーーー
ーー
ー
その頃 煉獄家
「すいません。あの…、父上。
お茶を淹れて来たのですが、
一度、お手を止めて、
お休みになられませんか?」
自室で難しい顔をしながら
文机に向かっている
槇寿郎に千寿郎が声を掛けた
「ああ。千寿郎か。茶か、すまんな」
槇寿郎はかれこれ文机に向かってから
一刻以上の時間が経っており
畳の上には書き損じを丸めた物が
あちこちに散乱していた
それほどまでに 返事を書くのに
気を遣う相手への手紙なのだろうか…?