第41章 羊羹と羽織
そう困ったように言いつつも
満更でもないと言いたげな
顔を工藤が浮かべていて
あげはは工藤が
杏寿郎の傍について居てくれて
良かったと工藤に対する感謝の念を
抱かずに居られずに居たのだが
「あの、お聞きしても?」
「まだ何か?」
「工藤さんのお好きな物をお教えてして
頂きたいのですが?食べる物でも
お酒とかでも、ご趣味でありましても。
お教え頂きたく、あるのでありますが」
自分自身に関する事を
あげはから質問されるのは
意外だったのか
工藤は驚いている様子だった
「は?私の…にありますか。
何かお礼をとお考えに
あられるのでありましたら。
炎柱様に私に苦労を掛け過ぎるなと、
鏡柱様から仰って頂いたご様子。
すでにお返しなら頂いておりますが?」
「それは、思った事を杏寿郎さんに
言っただけなので、それは工藤さんへの
お礼には当たりませんから。
何か、改めて
お返しをさせて頂きたくありますので」
「でしたら、
何も望みはしませんので。
どうか、私の願いを
叶えて頂きたくありますが?」
願いを叶えて頂きたいと工藤が言って来て
それが何よりのお礼になると
工藤がそうあげはに伝えて来て
「工藤…さん。ええ、勿論です。
杏寿郎さんと幸せになります、必ず」
「では、お約束
…して頂けますでしょうか?」
その工藤の言葉に
あげはが首を大きく縦に振って頷いた
「はい、
お約束させて頂きたいです…私からも」
「ありがとうざいます。あげは様」
鏡柱様ではなく
あげは様と呼ばれて
あげはがハッとする
「あの、工藤さん…今っ」
「ええ。失礼ながらに、
お名前を呼ばせて頂きました。
しかし…、良く似ておいでであられるかと」
「似ている?誰と誰がですか?」
工藤のその言葉にあげはが
目をきょとんとさせながら問い返した
「あげは様と、杏寿郎様がにあります。
ご自身でお決めになられた事を決して
お譲りにならない、意思の強さも。
芯の内を秘めたる所も…、それに…。」
そう工藤が言って一旦言葉を区切った