第41章 羊羹と羽織
「ええ。分かっておりますよ。鏡柱様。
私が炎柱様より賜っている、
結納や婚礼の準備一切に関わる事に
関するご質問にあられますね。
ここで立ち話もなんです、
どこかに腰を落ち着けましょう」
「すいません、お気遣いを頂いて」
応接間は使用中だからと
台所に近い和室の一室に案内される
ここは前に杏寿郎に内緒で
さつまいもの味噌汁を作りたくて
春日さんが支度を整えるのに
用意してくれた和室で
普段は使用人の休憩室に
宛がわれている部屋だそうだった
どうぞとお茶を出されて
「すいません」
とあげはが出された湯飲みを手に取った
「先ほど、炎柱様には鏡柱様に
ご自身からお伝えになられる様にと
私より、お話をさせて頂きましたが…。
そちらにありましたでしょうか?
お聞きになりたい事は、
それとは別にありましょうか?」
「いえ、多分、そこまで工藤さんが
杏寿郎さんに、
仰って下さっていたのであれば。
私からは、
何も…と言いたい所にありますが。
その諸費用の詳細を、彼が詐称する
恐れがあるのではないかと、
彼に任せるとは
言って置きながらにではあるのですが。
私の方にも、
知る位は許されるかなぁっと思いまして」
「貴方が、私に本当に聞きたい事は
その様な事にあられますか?」
その工藤の問いかけに
お互いの視線がぶつかった
あげははその問いにすぐに返せずに居て
いいえとあげはが首を左右に振って
自分の湯飲みに視線を落とした
「私が…、
聞きたいのはそうではありません。
流石に、工藤さんには
お見通しにありましたね。私の考えなど」
あげはが苦笑いをしてそう言った
あげはのその言葉に工藤の方も
あげはが聞かんとしている事を
悟って口を開き始めた
どこまで語るかは
炎柱様より任されているのだから
あくまで 使用人頭として
自分の主が 不利益を被る事なく
体裁を取り繕わなくては…
まぁ この鏡柱様には
わざわざそう取り繕う必要もないとも
思えなくも無いが…
悲しきかな 男と言う生き物が
見栄を張りたい物なのも
理解が出来てしまうのだから…仕方ない
時に 惚れた女の前ならば…