第41章 羊羹と羽織
「命じても無駄だと言う、
お前の意思は理解した。なら俺は
もう、何も言うまい。
だったら、お前に一任する。
お前が話してもいいと思う範囲で
話してくれて構わない。俺は出て来る。
大和に断りの話と、結納に必要な品の
配送の手筈を整えて来る。
それから、そのついでに
桜餅と…それから、
羊羹も買って来る予定だ」
「しかしながらに、
鏡柱様は私よりも、
炎柱様の口からお聞きしたいと
そう思われてはおられませんかね?
いえ、聞き捨てて下さいませ。炎柱様。
少々、口が過ぎておりました。
いってらっしゃいませ。炎柱様」
「工藤、お前は確かに
口が過ぎる事もあるが、総じて正しい。
これからも、俺を正して貰いたい。
頼りに居ているぞ、工藤」
「畏まりました。炎柱様」
工藤が深々と頭を下げながら
杏寿郎の姿が消えるまで
頭を下げたままで見送った
杏寿郎は足早に玄関へと向かいながら
先程の工藤の言葉を思い返していた
工藤の口からでなく
俺の口から 聞きたがっているか
甘露寺からも ちゃんと伝えるのかと
心配されていたしな…
あまり あれこれとあげはには
負担を掛けたくないのだが…
この 事実を受け入れるにも
相当に 気を揉んでいるだろう 彼女に
俺の抱えている物とは
比べ物にならない位に
三上透真の件は…
あげはの心には
負担になっているだろうからな
三上透真との戦いの前に
どうしても 何かしらの
目に見える形を残したかった
目に見える未来に したいと考えていた
出来る事なら 俺だけで
準備は一切済ませるつもりでいた
君は一緒にしようと
分かち合いたいと
そう言ってはくれるが
君は君でその奥底の重責を
なかなかに俺に
背負わせてくれないからな
お互い様…だと言う事だ
「俺では…、
まだ彼には及ばないのだろうか?」