第41章 羊羹と羽織
「では、そちらはこの工藤にお任せを。
炎柱様のご実家へは、
私から連絡を致しましょう。
時に、炎柱様。
ご実家への前乗りを兼ねた里帰りの件も、
鏡柱様にはちゃんとお伝えに、
なられておられるので?
して工藤は、
他に何をすれば宜しいのでありますか?」
工藤と杏寿郎の視線が絡み合う
ふっと杏寿郎が口の端を曲げて
ニヤッと笑うと
「里帰りの件は、
あげはにはまだ伝えてないが。
あげはは、俺の父上が好きだからな。
家に帰ると言えば、文句は言うまい。
恐らくだが、あげはは工藤。お前に
話を直接聞きに来るだろう。
工藤がお前が、
この件の全権を任されてるのは
あげはも知っているからな。お前には
あげはの聞いてくることを適当に濁して
貰いたいのだが?」
「は?鏡柱様が先代の炎柱様を?
お慕いににありますか?
お言葉にありますが、炎柱様。
ご夫婦になられるのであらば。
今から、隠し事はなされるな。
これは、
所帯持ちの先輩からの教訓にあります。
それに、鏡柱様はカンのよろしい方。
嘘は見抜かれると、
思って置かれた方が良いかと」
工藤の窘めるような物言いに
杏寿郎が眉を顰める
「工藤。お前は誰の味方だ?」
「さて。何の事の在られましょうか?
工藤はこの屋敷の使用人にありますが。
工藤は、お屋敷の為、主の為を
一番に考えて行動しておりますよ」
腕組みをしながら
杏寿郎が鼻から息を漏らしながら
辟易した様子で工藤の方を見ていて
「全く、お前は食えない男だな。工藤」
「工藤は、お二人のお幸せを願っております故」
その工藤の言葉を 杏寿郎は噛みしめていた
幸せを願っている
そうだな ここにも俺とあげはの
幸せを願ってくれている人が 居るんだ
まるで 俺とあげはの幸せすらも
俺とあげはだけの物ではもう
ないのかも 知れん…な
ふぅーっと杏寿郎が息を細く吐き出した