第1章 序章
甘露寺さんが煉獄さんに気になっている
意中の女性がいるのかを尋ねた時
『気になっている女性はいる!!
もう、何年も前からな!!』
『まぁ!!初耳だわぁ〜!
どんな方なんですか?
煉獄さんの想いの人だから、
…きっと素敵な女性には
違いないでしょうけど!』
気になっている女性が居ると
答えただけなのに
1人 蜜璃は杏寿郎の想い人に
あれやこれやと想像を
妄想とも呼べるほどに膨らませていた
そんな 蜜璃の想像とは裏腹に
返ってきたのは意外な返答であった
『俺も知らん!!』
『え?ご存知でないのに、
気になるんですか…?』
杏寿郎の言葉に思わず
しのぶが返してしまった
いくらなんでも それは
“気になる女性“になるのだろうか?
としのぶが考えていると
『俺は、確かにその女性について、
多くを知らない。何も知らないのに
等しい!彼女については、胡蝶!
君の方が、よく知っている筈だ!!』
と力強く言い切られてしまったが
…何のことやら
『は、はぁ…』
としのぶが曖昧な返事を返した
『え?そうなの?しのぶちゃんの
よく知ってる、人なの?』
興味津々の蜜璃が
しのぶの方へ体ごと近づいた
『と、言われましても、私には…』
バサバサ 羽音と共に
一羽の鎹鴉が任務を伝えに飛んできて
その話については
あやふやなままになってしまっていたのだが…
しのぶは自分の目の前にいる
あげはの顔を見た
もし仮に あげはさんが
煉獄さんの言う“気になる女性”
なのであるとしたら
あの時の言っていた事にも
先刻 あげはさんに求婚していた事にも
腑が落ちる
当の本人も知らないと
言うだけの事もあって
あげはが知っている事も
彼が先の炎柱である
煉獄槇寿郎の息子で 現炎柱
痛みにはめっぽう強いが
薬湯が大の苦手と言う位のことだった
まだ 柱として共に務めている
私の方が知っている方だ
もし 彼が 私に一目惚れ…
しているのだとすれば
彼は 私と言う女に
幻想を抱いているに違いない
知らない部分は
いいように解釈されているものなのだ
一目惚れと言うものは
「多分、…あの人、私の事を、大いに
誤解して言ってるだけじゃないかな?」
良く 見た目の割に“気が強い”と
言われる事を気にしているのか
あげはが言った