第1章 序章
私自身は見た目の割に
気と言うか我の強い
考えを決して曲げる事のない姉を
良く知っているので
あげはさんの性格について
姉ほどの頑固者でないのは知ってるし
旧知の仲なので
彼女の性分については
理解しているつもりだ
まぁ それに鬼殺なんて
多少気が強いくらいでないと
務まりませんでしょうし?
かく言う私自身も
同じ様な事を言われる方…ですし?
彼女の見目はいい方だ
今年22になる年齢だが
私と同じ位の年頃に見られる事も多いし
下手すると私の方が上に
見られる事もあるぐらいですし?
…少しばかり 腹立たしくもありますが…
確かにあげはさんの見目通りの
儚げな印象とは内面は異なる
だろうでしょうけども
「でも、あの煉獄さんのことなので…。
余計にあげはさんの事を
気に入られるかも、知れませんね?」
としのぶが笑った
「ちょっと、他人事だと思って!
楽しんでない?全然知らないのに、
求婚されて困ってるんだけど?」
笑い事じゃないとあげはが
不満そうな顔をする
「あら。私が言うのも何ですけど、
煉獄さんはいい人ですよ?
家柄も、剣の腕だって申し分ないですし、
何より懐の深さもありますから」
にやにやと嬉しそうに笑うしのぶ
その一方のあげはは冴えない表情だった
「…彼の事、気になるのは
わかりますが、死んだ人は
戻って来ませんよ?」
また…だ
しのぶちゃんは決まって
彼は死んだと言う
しのぶちゃんだって知ってるはずなのに
「3年もあなたの心を
離してくれない男なんか、
忘れちゃったらいいじゃないですか」
3年 彼がいなくなって
もう3年になるのか
忘れたい
彼の事を 忘れてしまいたい
死んでるのか 生きてるのかすら
わからない相手なんて
「そんな…事…知ってるよ、
ずっとそうしたいって、
そうしようとしてた…けど。
けど、もう…いいんだ。私は」
もう こんなにも私は
誰かと向き合うことにすら
臆病になってしまっている
また失うんじゃないかって
「私の事なんかより、
しのぶちゃんはどうなのよ?」
「え?…私?…ですか…?」
「ふぅーん。しらばっくれるつもりなんだぁ?
私が、気がついてないとでも?」
ビクッとしのぶが肩をびくつかせた
「あ、あまり私を、…からかわないで下さい」