第40章 気持ちの跡
情けない声を出す善逸に向けて
蜜璃が声を張り上げた
「そこぉ!へばって、
文句言う暇があるなら、つべこべ言わず
掛かって来なさぁいっ!!
こらぁ!休まないのっ。掛かって来る!」
「イヤァアアアーーッ。もう、ヤダッ。
無理だから、もう無理ぃ~。
これ以上稽古したら、死んじゃうからっ!
ちょっと!炭治郎、助けて。
ねぇ、炭治郎、頼むよぉ~」
蜜璃から逃げる様にして
善逸が蜜璃の前から距離を取ると
炭治郎の背中に隠れる
「コラ。善逸、文句言うな!
ダメだぞ?善逸、真面目にしないか。
甘露寺さんは唯一、あの煉獄さんの
稽古に耐え抜いた継子の先輩だからな。
それに、今は甘露寺さんも柱だ。
直々に稽古なんて、そうそうに付けてなんて
貰えない存在なんだぞ?感謝しないと」
「いやだぁ。んもう、炭治郎君たら。
うふふふ。そんなに褒めちゃって。
も~う、そんな事ないって。
恥ずかしいわぁ~、照れちゃう」
蜜璃が木刀を軽々しく
上下にブンブンと片手で振り回しながら
くねくねと身体を捩らせる
「女なんかに、負けっかよぉおおおおっ」
「掛かって来なさいっ!
猪君、その調子よ!素敵ね」
伊之助の攻撃を回転しながら
蜜璃が木刀で捌いて行く
「なかなか、やるじゃないの!
いい感じ…ね、でも。私だってぇ
負けてられないんだからぁ!」
「ざけんな!乳出し女っ、
涼しい顔しやがって!!うぉおおおっ!」
伊之助が渾身の一撃を
蜜璃めがけて振り下ろす
蜜璃がそれを回転しながら避けて
その回転したままの勢いで
「やぁああああぁっ!」
蜜璃が伊之助に対して
回転の力が加わった一撃を繰り出すと
カァンと伊之助が自分の顔の前で
二本の木刀を交差させて
蜜璃の一撃を受け止めるが
その勢いで吹き飛ばされて行く
「しまったっ!ぬわぁあああっ!」
ドサッと伊之助が
地面に尻もちをついて
「…ってぇな。なんつう力してんだ、
あの乳出し女、…あん?」
上から影が降りて来て
伊之助が顔を上げると
そこには腕組みをした
杏寿郎が立って居た