第6章 無限列車にて 後編
「そして、俺の誘いに
頷く者もなかった!!」
つまらないと言いたげに猗窩座が言った
それはそうだろう
柱が鬼になぞ なる訳がない
炭治郎は今 自分の目の前で
起こっている事を
現実の様に捉えられずにいた
次元が違いすぎる 何が起こってるんだ?
目で…追えない…
ヒノカミ神楽を使うといつも体が
言うことを聞かなくなってしまう
ーこの鬼は ヤバいー
俺も加勢しなくては
そう思うのに 体が…動かない
いつの間にか駆けつけて来ていた
伊之助も炭治郎と
同じように感じているのか
炭治郎の傍で立ったまま
動けないでいた
動かない… でも 動かなければ…
凄い 威圧感だ ここに居ても感じる
あの鬼の恐ろしいまでの強さ
「動くな!!」
鬼と戦っていた杏寿郎が肩越しに
視線のみをこちらへ向け
2人に向けて静止するように叫んだ
まるで動こうとしていたのを
知ってかの様だ
「傷が開いたら致命傷になるぞ!
待機命令!!」
杏寿郎のただならぬ気迫に
2人が体をビクッと竦ませた
「弱者に構うな、杏寿郎!全力を出せ!!」
苛立ちを覚えた様に猗窩座が言った
自分との戦いに集中しろと言いたげに
弱者… 確かに 俺達じゃ
煉獄さんの足手纏いにしか
ならないのかも知れない…
ハッと何かに炭治郎が気がついて
伊之助の方へ向き直る
「伊之助!頼めるか?
…あげはさんを、ここに!
俺達が無理でも、あの人ならきっと。
煉獄さんの助けになれる」
「お!おお、そうだな!あげるなら…」
炭治郎の提案に伊之助が合意を示す
「それは了承しかねる!ダメだ!」
杏寿郎の声が飛んで来た
声が低い
強い否定の感情が
込められているのがわかる
「彼女は今、彼女にしかできない
仕事に当たっている!
…もし、彼女がこちらへ
向かおうとしてるのなら、
君達にはそれを止めてほしい!」
炭治郎には杏寿郎の言葉が
理解出来ずにいた
それは炭治郎の隣の伊之助も同じだった
この鬼は強い
それも桁違いの強さだ
杏寿郎は強いそれはわかるが…
戦力は多い方がいいに
決まっているはずだ
なのに 杏寿郎はそれを否定した
「れ、煉獄…さん?」