第40章 気持ちの跡
「しかしにありますが、杏寿郎。
その、私達の痴話喧嘩の様な物に
蜜璃ちゃんや炭治郎君を巻き込まずとも」
「なら、君が折れるか?
それが一番早いが、どうする?」
そう杏寿郎があげはに提案して来て
あげはが視線を杏寿郎から逸らして
視線だけでなく顔ごと逸らして来るので
杏寿郎があげはに顔を近付けて来て
あげはが逸らす視線を追いかけて
更に視線を向けて来るのを
あげはが止めて欲しいと言わんばかりに
自分の手を使って逸らさせる
「それと、これとは
別にありますよ。杏寿郎。
ご存じにあります通りに、
どうせ、私は気が強いですよ。
何とでも仰って下さい。
杏寿郎に、言わずともそれは我ながら
自覚をしておりますので。しかしながら、
他の事ならまだしも、私の方も
そちらに関してはお譲りできませんので」
成程 これは手強いな…
他は全て譲るがこれだけは譲れないと来たか…
頑ななタイプだとは
俺も理解していたが
こうも ここまでに
頑なになる必要があるのか?
意地を張り通すつもりでいるんだな
俺と根競べでもするつもりか?あげはは
そう言えば前に父上が
あげはは俺の手に余ると言っていたが
こう言う事だったか…と
妙に納得が付いてしまった
手に余ると知りながらも 彼女を
俺の手に収めようとしているのだから
俺の方も俺の方で 大概かも知れんが
だが 君が本気だと言うならば
俺も本気で行かねば
それは失礼に当たると言う物だからな
だが その 君の意地の理由も
俺は理解していると言うのに…な
「だが、その強情さも君らしいからな」
そう言いながら
杏寿郎が口の端を僅かに上げた
全く そこも 含めてのあげはだからな
「でも…杏寿郎位にありますよ?
私のこの性分を…、
良い…と言ってのけるのは」