第40章 気持ちの跡
具体的にではないものの
そう照れくさそうにしながらも
素直な気持ちをあげはが
俺に伝えて来てくれるから
これを喜ぶな と言う方が
難しい…問題の様にあるが…な
この上ない 喜びの様に感じてしまう
感じるだけでは当然 留めては置けないが
「あげは…、分かってるだろう?
俺にそんな事を言ってしまえば、
こうなると分かってて、言ったのか?」
杏寿郎があげはの腰に腕を回して来て
グイっと身体を引き寄せられてしまう
杏寿郎が何を今考えていて
私にどうしたいと思って居るのかは
当然…分かっているにはいるけど…でも
下半身が密着する位の距離なのだから
当然…顔も こんなにも近いのだから
「あの、杏寿郎…確かに
門はくぐっておりますから、ここは。
貴方のお屋敷の敷地にはありますが?
その、外に…ありますよ?」
杏寿郎の顔から自分の顔を
あげはが反らせながら言って来たので
自分の目の前に来たあげはの耳に
杏寿郎が自ら口を寄せて来て
彼の吐息が鼓膜を揺らして
耳に掛かる息の熱を感じ取ってしまう
「だが、中には竈門少年達と、
それにもう甘露寺も来ているが?
その上、屋敷の使用人も居るからな。
屋敷の中よりも、ここの方が…色々と
都合がいいんじゃないのか?
君は俺と…、口付けたくはないのか?」
そう 口付けをしたくはないのかと
問いかけられてしまって
自分の頭の中が 彼との口付けで
いっぱいになってしまっていて
そうしてほしいと そうされたいと
そう したい…って思ってる自分が居て
キュっと杏寿郎の隊服の胸の辺りを
あげはが掴んでそのまま握りしめる
「そっ、それは…、
そうしたく…ありますが、でもっ…」
しどろもどろになりながらも
あげはがそう答えて来て
いつになく取り乱す彼女は
可愛らしくもあるが…
だからと言って
容赦もしてやれそうにないが
そうしたいと…
思う気持ちがありながらに
そうしたい…と言いだせない
その性分は理解しているので
なら そうしたいと言える様に
俺から更に彼女に
もう一押し…してやればいい