第39章 気持ちと想いと願い
「いいも何も、
そうしたかったんじゃなかったのか?
それに、あの店に行く前も
手なら繋いでいたはずだが?」
そう言いながら杏寿郎が
こちらに手を差し出して来て
その手にあげはが
自分の手を重ねると
そのまま指を
絡めて手を繋がれてしまって
恋人繋ぎにされてしまう
「その、さっきのは
手を繋いでいたと言うよりは…、
連行されていたと言うのが
適切な表現であったかと…」
そのまま 手を繋いで
大通りを歩く
「隊服なのが惜しいぐらいだな…、
私服の方が、逢引感が出るが。
でも、俺はその羽織を纏った君と…。
こうする事を許されていると思うと。
身に余る光栄にも感ずるが…」
「そ、そんな。
杏寿郎は大袈裟にあります。
私はそんな、大それた存在では…ッ」
ギュッと繋いでいた手に
力を入れられてしまって
ビクッと身体が反応してしまった
「それに、こうしてずっと
君と手を繋いで居たいぐらいだがな…」
手を繋いで居たいと
そう杏寿郎が言って来て
丁度 今 自分も…杏寿郎と
手 繋いで居たいなぁって
そう 感じて居た所だったから
ギュッと彼の手を握っていた手を
自分からの返事の代りにあげはが握ると
あげはのその行動に杏寿郎が
一瞬目を見張ってすぐ元の表情に戻ると
「…あげは」
「はい、何にありますか?杏寿郎」
「君は自覚があるのか?」
「自覚…、にありますか?」
何の事とでも言いたげに
あげはの顔に分からないと
そう書いてあって
「いいのか?あげは。あまり、俺を
喜ばせ過ぎても…良い事は何もないぞ?」
「…え?え?…あの、杏寿郎?
あ、アレ…あの鎹鴉…」
「誤魔化すつもりか?あげは。
君も往生際が悪いぞ?…むっ。あの鴉は…」
バサバサと
鎹鴉が一羽こちらへと飛んで来て
その頭の飾りから
その鎹鴉が蜜璃の鴉の麗だと気が付いた