第39章 気持ちと想いと願い
「まぁまぁ、男がそう言ってんだ。
姉さんも、
そう硬い事をお言いなさんなよ。
そこは兄さんのお言葉に
素直に甘えるって言うのが、粋な
女ってもんでぇ。買って貰いなせぇ」
そう店の主人に窘められてしまって
杏寿郎の申し出に甘えなさいと
そう言われてしまって
「え、あ、…はぁ。
そうで…ありましょうか?」
「そらぁ、そうしたら兄さんも
喜ぶってぇもんよ。
そうだろィ?兄さん」
「はははははは。すまんな。
やはり主人は、商売上手にあられるな。
どうだろうか?彼女に合う
ハンカチはあるだろうか?」
「だったら、このレースのハンカチ
なんてぇのはどうだい?」
そう言って
繊細なレースが四方にあしらってある
ハンカチを数枚 あげはに見える様にして
主人が店先の陳列台に広げて行く
「わぁ、凄いですね、レースが繊細で…
細やかな美しさがありますね…。
ああ、それも特にこちらの物が…
その細やかさが際立つ様にあります…」
そう言って あげはが
その中の一枚を指さした
「流石は、
小町紅を差すだけの姉さんだ。
その、ハンカチがこの中で一番上等の
レースのハンカチですぜ?
レースも一等の特上品でさ」
「ええ、とても
綺麗なハンカチにありますね。
この上に
あのバラのポプリを…っとすいませんっ」
あげはが何かを言いかけて
しまったと慌ててその言葉を否定する
「なら、それにしよう」
「え?ちょ…杏寿郎?」
じとっとした目を
杏寿郎がこちらに向けているのに
あげはが気が付いて
それにしようと言って置きながらも
視線はどうにも不満気な感じだったのが
あげはにも気になってしまって
引っかかっていると
「あげは。
君の事だから、このハンカチの上に
あのバラのポプリの入れ物を置いたら
ピッタリだとか…考えているのだろう?」