第39章 気持ちと想いと願い
そう言って ポンポン菊の様になった
摘まみ細工の簪の中のひとつと
毬の様になった鈴の中のひとつを
杏寿郎が指さして尋ねて来て
私がそれを見ていたのを
見られてた…のだと 自覚せざるを得ない
「……そうに、あります」
とあげはが小さな声でそう答えたので
「買うか?」
と杏寿郎が尋ねて来て
あげはが首を横に振った
「あの、杏寿郎、もしやと思って
お尋ねするのですが。
見ておられ…たのですか?」
「ああ。そうだが?
それを見ている、君を
俺は見て居たからな。
気になってたんじゃないのか?」
「いえ、結構にあります。
見ていただけ…ですので」
「そうか、君がそう言うならそうなのだな」
危ない 危ない
うっかり何かを見入ってしまったら
この調子だと 見てた物を
全て買い与えられてしまう勢いだ
それに おちおち商品も見てられない
また 杏寿郎に見られてたら…
見ないで置こうと
その摘まみ細工の簪から顔を逸らすと
視線を逸らした先にあった
ある物が あげはの視界に入って来て
あ でも
あれ… あっちにあるあれも…
可愛い…な
ちりめんで出来た カード型の
脂取り紙を入れれるケース
あの色…しのぶちゃんに合いそう
あっちのはアオイに…いいな
ハッとしてあげはが顔を上げると
こちらを見ていた
ニコニコ顔の杏寿郎と目が合ってしまって
その視線から慌てて視線を逸らせた
にしても 色々と細々とした物があるな
あっちに置いてあるのが
手鏡とか櫛…それから
色々な大きさと柄のがま口財布
後は… あれは…
その店先に並んでいる商品の中に
見知った物があった
昨日の夜に杏寿郎から贈られた
小町紅の容器の柄違いの物があったからだ
「あの、もしかして杏寿郎…このお店で」
「ああ、今、君が差している
小町紅を購入した店だ。あの巾着袋も
ここの物だったからな。
あの巾着が欲しかったんだろう?」