第39章 気持ちと想いと願い
それに さっきから黙り込んだままだ
「あの、杏寿郎?」
「後で、憶えて置くといい」
そう念を押す様にして杏寿郎が言って来るが
走るスピードを落とす気配はなかった
一体 どこへ向かっているんだろう?
そう言えば… 確か
お昼ご飯の後に
寄り道をしたいと言っていたっけ??
「あの、杏寿郎…。それなりに
走っていると思うのですが、その…
どちらに行かれるのですか?」
流れる景色の色を見ながら
あげはが杏寿郎に恐る恐るに尋ねると
「ああ、ちょっとした買い物だ。
君と一緒に行きたいと、
思って居る店があるんだ」
それから更に10分くらい
全集中の呼吸をして早駆けをして
隣の隣の更に隣の町位の大通りへと移動すると
杏寿郎が走る速度を緩めたので
ここから 目的地までは近い様だった
「確か、この町の通りだったと
俺は記憶してるのだが…。違ったか?
いや、あっちの町だったか?
ああ、ここだ」
そう言って自分の記憶を辿りながら
そのまま大通りを進んで行って
杏寿郎がある一軒の店の店先で足を止める
杏寿郎の身体の影から
あげはがその店の様子を伺うと
小さな 小間物屋の様だった
ーーー
ーー
ー
時を遡る事数時間前
甘露寺蜜璃は
自分の部屋で必要な荷物を纏めていた
「えっと、これでしょ?これと…。
あとそれから、これも、後…」
蜜璃の部屋の文机の上には
自分の師範である
煉獄杏寿郎から届いた手紙が置いてあった
蜜璃がその文机の上の手紙を
手に取ると カサッっと
その手紙を広げてその内容に目を通した
もう 何度も読んだのだ
そこに書かれている内容は頭にあった
「煉獄さんから、こんなお願いを
されるだなんて、夢みたいだわ。
本当に、夢みたい。
信じられない、こんな日が来るなんて」
そう言って蜜璃が
その手紙を自分の胸の辺りに
グッと押し付けると
そのまま瞼を閉じた