第6章 無限列車にて 後編
ハッと我に返って気がついた事がある
この人の蘇生に集中していたが
それなりに時間が
かかっているにも関わらず
杏寿郎が戻っていなかった
ただ単に 大事がなくて
炭治郎君達と前方の車両の
救出活動をしているのであれば…
なんら問題はないのだが…
ドォオオオオンーー
大きな何かが落下するような音がして
地面が少し揺れたのを感じた
音の方向… 先頭車両の方だ…
「この人は、念の為搬送して。
ここはもう大丈夫そうだから
任せるわね?」
「はい、かしこまりました!あげは様は?」
「私は…、前方の方の様子を
確認しに行ってくる」
「あげは様、お気をつけて」
「ありがとう」
後方5両分は大体 片がつきつつあったが
前方の3両の様子がまだわからないし…
それにさっきの音
爆発音とも違ってるみたいだし
音がしていたが火の手や
煙が上がっている様子はなかった
そうこうしている間に
次の隠の部隊が到着して
救護活動は急ピッチで進んで行く
前方の3両は
善逸君と禰󠄀豆子ちゃんが守っていたはず
禰󠄀豆子ちゃんは鬼だから
怪我をしても大丈夫だが
まぁ 多分禰󠄀豆子ちゃんの事は
善逸君が守ってると思うし?
脱線して折り重ねっている
車両と車両の間に残された小さなスペースに
黄色い影が見えた 善逸の羽織だ
ーーーーー
同じ頃 炭治郎と合流していた杏寿郎は
一体の鬼と対峙していた
その鬼の瞳には “上弦の参”と刻まれていた
「では、素晴らしい提案をしよう」
その鬼はそう言うと杏寿郎を見て
徐に右手で手招きをする
「お前も…鬼にならないか?」
「ならない」
鬼の提案に躊躇する様子もなく
キッパリと断った杏寿郎に
鬼は気に留める様子もなく
ふっと微笑を浮かべた
「見れば解る、お前の強さ。柱だな?
その闘気、練り上げられている。
至高の領域に近い」
「俺は炎柱、煉獄杏寿郎だ」
お前と呼ばれたのが気に入らないのか
唐突に煉獄が名乗りを上げた
「俺は猗窩座」
それに応えて鬼も同様に名乗りを上げた