第38章 牛鍋とすき焼きと胸の外と内 後編
「結婚資金だ」
「結婚……資金?」
「そのままの意味だが?
君の結婚式の費用だと言えばいいか?」
え?どういう事?
結婚資金??って事はお金…だよね?
どこから 出て来たの?そのお金
それも…預かってるって??
「え?結婚資金って…、
どういう事ですか?そんなお金を
しのぶちゃんに預けた憶えは、
私には、全くないのですが?」
意味が分からないと言いたげに
あげはが杏寿郎に尋ねて来る
「元々は君が食費等の生活費として、
蝶屋敷に毎月入れていた金の事だが?
それを胡蝶の姉がずっと、
君が結婚する時にと、蓄えていた物だ。
相当な、纏まった金額だったが?
後、胡蝶も姉と同じ事をしていた様だぞ?」
「でも、そのお金は、あくまで私が。
然るべきに、…生活費としてですね。
私が蝶屋敷に毎月納めていたものでして…。
その様な意味で納めていた物では
全く持ってありませんが?
でしたら、そのお金は蝶屋敷の、
備品の充実にでも、
私としては充てて貰いたく……」
彼女のその口ぶりから察するに…だ
自分が今まで 生活費の充てて欲しいと
そう言って預けていたお金を
自分の結婚資金として貯金されていたとは
当のあげは本人も
全く知らなかった様だった
だが 胡蝶から聞いた話によれば…
元々 あげはが毎月欠かす事なく
入れていた生活費…については
「その生活費についても、
元々蝶屋敷の主人である、
胡蝶カナエが、再三
必要ないと言っていたのに、君が
一方的に納めていたとも聞いたが?
だから、金の心配ならしなくていい。
その貯金も、
元を正せば…君の物だからな。
俺が聞きたいのは、
それを結婚資金に充ててもいいかの、
君本人の承諾を得たいのだが?」
「杏寿郎。そのお話に
お返事をするに際しまして。
私の方から、お金に関する話で。
貴方に、
お願いしたい事があるのですが?」
今までにないぐらいの鋭い
意志のこもった視線を
あげはから向けられる