第38章 牛鍋とすき焼きと胸の外と内 後編
杏寿郎の言葉にあげはが
はぁーっとため息をついて
呆れたと言いたげな様子で
ダメだっただろうかと聞いてはいるけど
一応 こちらに対して
お伺いは立てている聞き方ではあるが
次の満月の夜までに
結納を済ませるのは譲れないと言っている
もとい するからな! と言ってる…んじゃ
いや これでも 譲歩を示してくれている
本人はつもり…なのか…な?
彼の性分を考えれば…
「いえ、ある程度は
予測は出来ておりましたよ。
もうすでに、これだけ式に向けての
ご準備を先々にされている杏寿郎が。
結納の準備に限って、
何もしていない訳がないと
そう思いはしておりましが…、まさか
ここまでにも事を運んで下さっていたとは。
ですが、杏寿郎。
私に秘密が多すぎにありやしませんか?」
まだ隠してる事が
内緒で事を進めている事が
あるのではないかと
あげはが杏寿郎に問いかけると
「そうか?俺は
秘密にしていたつもりは無かったが。
事を急いだ方がいいと思ったからな。
ああ。先ほど話していた三好さんを
招待する件についてだが。
心配には及ばんぞ?あげは。
日程も3日あるんだ、
どの日かは三好さんも、
予定が付くだろう。
短時間でも来て貰えればいいからな」
杏寿郎のその言葉が引っかかる
秘密だらけで事を大いに進めて置いて…と
そこの部分も気になったにはなったが
ん? 日程が 3日ある……
日程が 3日ってどういう事??
確かに彼は 帝国ホテルを3日押さえたって
そう 言ってたけど前に
まさか
まさか……とある考えが
あげはの中に浮かんで来て
「あの、杏寿郎?」
「ん?どうかしたか?あげは…。
ああそうだ、
その胡蝶の姉の振袖の事だがな。
結納の後に、仕立て直しをしないか?
どうせ、
3日分の婚礼衣装が必要になるんだ。
その振袖を、引き振袖にして貰わないか?
白無垢や色打掛には格式は劣るが
胡蝶の姉も…君の晴れの日にそれを
着て貰える方が、喜ぶと思うのだが?」