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その恋は琥珀糖のような【鬼滅の刃】【煉獄/救済】

第38章 牛鍋とすき焼きと胸の外と内 後編



その長いまつ毛の付いた瞼が

もう

開く事がなく


その眠りから 目覚める事は無いのだ


まるで 今のこの現実が…夢か何か様で

現実味がない… 醒めない夢に居る様な

そんな現実味のない そんな世界にいて


ある事を思い立って
部屋の出入り口に立って居た
3人の傍らをすり抜けて

あげはが何かを取りに
カナエの私室へと向かった



「カナエ…姉さん…ッ」


「しのぶちゃん、ねぇ、これも一緒に。
カナエちゃんの棺に納めたいんだけど?
この振袖はカナエちゃんが、
成人式に着るつもりにしてたやつ、これも…」


カナエの棺の傍らに居たしのぶに

あげはが手にして 差し出そうとしていた

その振袖を 

ぐっと棺から遠ざける様にして
しのぶが押し返して来て


「しのぶちゃん?」

「…あげはさんの…、
貴方のお気持ちはわかります。
せめてその日に着る事が叶わないのなら、
天国でとでも貴方の事です、
そう思っていらっしゃるのでしょうが。
私は、そうは思いません…その
振袖の色味…、それを見ればわかります。
姉が、カナエ姉さんが誰も思って
その振袖の反物を選んだのか…ッ」


その柔らかい 新緑の様な淡い黄緑と

桜の花を思わせる様な 桃色の色合いが


混じり合う その地色は…


カナエが誰を想って 選んだのか


この中の誰が見ても 分かる物で…


ちらっと部屋の隅で
息が出来ないかの様に
自分の胸を押さえたままで

泣く事すら出来ずに
固まってしまっている


カナヲの姿をあげはが見る


「けど…ッ、私はカナエちゃんに…」


「だったら貴方が代わりに着て下さい。
カナエ姉さんの代りに、着て下さいそれをッ…」


そんな形でも いいから
これをカナエちゃんに着て欲しいと

あげはは更に言い出そうとしたのを


しのぶの言葉に遮られる



「カナエ姉さんの…その想いを
願いを…ッ、無駄にしないで…下さい」







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