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その恋は琥珀糖のような【鬼滅の刃】【煉獄/救済】

第38章 牛鍋とすき焼きと胸の外と内 後編



「ああ。胡蝶に結納に君の家族として
出席して欲しいと依頼した時にな。
俺から、君には
振袖を贈るつもりにして居たんだが。
胡蝶がそれを、
止めて欲しいと申し出て来たんだ。
胡蝶もそれを身に纏った君を、
見たいとそう思ってるだろうからな」


そうか やっぱりしのぶちゃんが

杏寿郎にそれを頼んでくれたんだ


私がその振袖に 袖を通す事があるのなら


きっと それが最初で最後だから



…その振袖は


カナエちゃんが生きていた時に

自分の成人式の為に

仕立てを頼んでいた振袖



しのぶの分もと同じ柄の色違いで

仕立てを依頼していた物だった


一緒に反物を選んで欲しいと

カナエちゃんが言って来て

一緒に反物を選んだのを憶えている

その時の カナエちゃんの笑顔も


ー『これを着た、
しのぶを見るのが楽しみだわ』ー


その言葉も… 叶わない物に

なってしまったけど


せめてでも…と


その時に仕立てた 振袖を

カナエちゃんの葬儀の時に


お棺に入れないかと私が提案したら


しのぶちゃんが首を横に振った


その時のやり取りが

頭の中で鮮明に色を持って


蘇って来る


ーーーー
ーーー
ーー


「…うっ、ぐすっ…カナエ様…っ」

「う、…うぅ゛、っく…、ひっく…」


すみ きよ なほの3人の

すすり泣く声が聞こえる中に

アオイが声を押し殺して泣くのが混じって


あげはの耳には届いていた


カナエの遺体が収められた棺には


色とりどりの花が隙間なく敷き詰められていて


白い菊は嫌だと 

前に姉さんが言っていたからと言う


しのぶの たっての願いだった


でも その鮮やかな花畑の中のその姿は


穏やかな表情を浮かべていて


紅の差された 艶やかな唇は

今にも 息を…吐き出しそうでいて


「カナエ…ちゃん…、カナエちゃん…ッ」


最期に見た 貴方の笑顔ばかり


私は頭の中で思い出していた








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