第6章 無限列車にて 後編
シュウウウウウッーー
車両のあちこちから煙が上がっている
巻き上がった土埃が視界を遮る
横倒しになっている
先程あげはが鏡の呼吸を使って
乗客を閉じ込めていた
車両を杏寿郎が覗き込んだ
あげはは安全だと言っていたが
この衝撃だ…
車両の中は座席が
座席だったのかと思うほど
グシャグシャの
メチャクチャになっていたが
外に衝撃が来るという
あげはの言葉は本当の様だった
俺もあのまま この車両に留まっていたら
跡形もなかったかもしれない
杏寿郎はその光景に目を見張った
あげはの作った鏡のトリカゴは無傷で
塵の一つも付いておらず
割れている様子すらもない
透けて見えるが中の乗客も無事の様だった
最後尾の客車の上を
あげはがトコトコと歩いてきて
ガラスが割れている所から中に入ると
そっと 鏡のトリカゴに手を触れる
ひとりでに鏡が割れて
中の乗客達が解放される
「皆さん、お怪我はありませんか?
動ける方から、外に出て男性の方は
、汽車の下敷きになっている方の
救出と、自力で動けない方の搬送の
お手伝いをお願いします」
落ち着いて毅然とした態度で
あげはが乗客達に言った
「女性の方は、私と一緒に怪我をされている
方の手当てのお手伝いをお願いします。
小さなお子様をお連れの方はお子様の側から
決して離れないようお願いします。
それ以外で、お手伝い願える方は
私の後へついて来て下さい」
自分の状況が理解できずに
しばらく呆然としていた
乗客達がそれぞれにあげはの
指示に従って動き出す
汽車の外にはすでに
自分で歩ける乗客が何人か集まっており
他の乗客に手を貸しながら
歩く者の姿もあった
「皆さんの中で、医療従事者の方が
おれられましたらご協力を。
頭部に傷のある方、意識のない方、
出血の多い方は私の方へ!
そうでない方は、あちらへ。
動ける方は中に残っている方の救助を」
あげはの言葉に
1人の老紳士が名乗りを上げた
引退しているが
町医者をしていたとの事だった
2人で意識のない乗客達の
呼吸や脈を確認してる様だった
あげはが先程呼びかけた
手伝いをしてくれる女性客達に
意識のない乗客を片手と片足を
曲げて横に向けると
他の意識のない乗客を
この体勢にするよう指示した