第38章 牛鍋とすき焼きと胸の外と内 後編
杏寿郎が結婚式に
三好小母さんを招待しないかと
そう提案をして来て
「でも、只の……
客の中の一人にありますよ?」
「だが、今日のあの人を見ていて
俺はそう思ったのだが?どうだろうか?
あの部屋にしても、すき焼きの肉にしても
心をこんなに尽くしてくれたのは、
君が只の客では三好さんの中ではないと
そう言っていると、俺は感じたがな」
「杏寿郎……あの、三好小母さんは……
きんつばに……あります…です」
そう目を伏せながらも
あげはが語尾をすぼめながら言って来て
思わず そんな彼女が
可愛らしいと感じて くすっと
杏寿郎は笑ってしまった
「で、杏寿郎はその三好小母さんと。
私をお待ちの間に、何のご相談を?
大体の想像は付くのですが…。
何の相談も無しに事を進められるのは
私とて、あまりいい気がしませんが?」
あげはの棘のある様な言い回しに
杏寿郎が腕組みをして
むうと口を尖らせていた
「ああ。君の察している通りの内容だ。
あの店で結納に対応が出来るのかを
相談していた。後で工藤に
仔細の相談はさせるつもりでいるが?」
「杏寿郎…、また
工藤さん頼みにありますか?
杏寿郎は、工藤さんを
頼りにし過ぎですよ。工藤さんが
有能な方なのは、存じております。
確かに私達は大事な時期にありますが、
結納を取り交わすのは、工藤さんではなく
私達同士にありますよ?
もう、ここまで私に
バレてしまっているのですから。
ちゃんと、お話をして頂いても?
日程も、場所も、様式も何一つ
お知らせして頂いておりませんが?」
「あげは。その…いいのか?」
「いいとは?何がにありますか?
もう場所を押さえておいでなのでしたら、
別に無理にこちらに変更せずとも」
「だが、この店は…君と
君の父上との思い出の店であるし。
胡蝶達とも、何度か来ているのだろう?
それに、三好さんも…
君の晴れ姿が観れれば
安心するんじゃないかと思ってだな」
「晴れ姿…って、杏寿郎。
まさか…と思ってお尋ねしますが」