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その恋は琥珀糖のような【鬼滅の刃】【煉獄/救済】

第37章 牛鍋とすき焼きと胸の外と内 前編



死せる者 生きる者

その扱いに隔たりが無いのも


亡くなった者の事も

その思い出と共に大切に出来るのも


彼女の父がそうしていたから…なのだな


「父は確かに、亡くなりましたけど…。
でも、父の重んじていた事は、
私のここで生きています。私が
忘れなければ、常に私と共にあって
私の支えとなり助けとなってくれますから。
すいませんっ、折角美味しい物を
食べているのに。湿っぽい様な
話を…してしまいましてっ」


きっと彼女の あげはの心の中では

大切な人達が今も 思い出として生きていて


それを彼女自身が 無くしてしまいたくないと

憶えて居たいと そう願ってるのは


前に 母上の墓参りに行った時に

あげはが持っていた線香の筒にあった

隊士達の名前の紙がそれを物語っている…な


「だが、それは……
君が重んじている物だろう?
君は、怖いと思って居るんじゃないのか?
自分の中にある、その人との思い出や
その人の記憶が薄れて行くのを、
怖いと…感じてるんじゃないのか?」


「人間の脳と言うのは、
……忘れる様に出来ているんです。」


その繋ぎ止めて置きたい

憶えて置きたいと言う思い出も

年月の流れと共に薄れて行く

それは杏寿郎自身も 自覚していた事で


何よりも失いたくないと

そう思う思い出が薄れ行くのは

あげはは 仕方がない事だと


そう言って来て


「忘れる様に…、
出来ている?どう言う意味だ?」

「もし、人が”忘れる”事が出来なければ。
全ての記憶が残り続けるのならば、
どうなると思いますか?
例えば今こうして
牛鍋とすき焼きを食べましたよね?
きっと記憶に残るのは
一緒に牛鍋食べたなってそんな記憶だけです。
でも、忘れなければ
この店の細部の情報の記憶
目で見て舌で味わって、感じた事の記憶、
交わした会話の記憶、その全てが残り続ける。
必要でない会話、耳に挟んで
聞いただけの他人の会話
ありとあらゆる、
必要のない情報が脳内に溢れる」




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