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その恋は琥珀糖のような【鬼滅の刃】【煉獄/救済】

第37章 牛鍋とすき焼きと胸の外と内 前編


彼女は何でも美味しそうに食べるが

何かを食べるのに
こんなに嬉しそうにしている

あげはを見るのは初めてかも知れない


彼女がその肉をふわふわに泡立てられた
溶き卵に絡めて口に運ぶ様を

横目に眺めていると


「折角、私がいい塩梅に焼いたんだ。
ホラ。兄ちゃんも、冷める前に食べなよ」

「ああ、そうでしたね。すいません」


そう促されて 一口で

それを頬張ると

噛んだのか噛んでないのか

意識をする間もなく 肉が解けて消えた


ん?肉が消えた?


その未知にも似た感覚に
戦慄が走るかのようだ


そんな錯覚にも似た感覚と

口の中に広がる その肉本来の香りと

脂の持つ甘さがじんわりと余韻として残る

それに確かに あげはの言葉の通りに

割り下に焼いた肉の香ばしさが混じって


牛鍋にはない インパクトのある

味わいになっている


成程 割り下で牛肉を煮るのは同じだが

全くの 別物だな 



これは 美味いな



「美味い!美味い!
これは、三好さん。美味いな!」


「んんーー。美味しい~。
まるで、蕩けて消えて行ってしまうみたい。
ふわふわに泡立てられた新鮮な卵と
お肉の相性が、最高……に合いますね」

そう言って恍惚そうな表情をしながら
はぁーっとあげはが熱いため息をついた

「お肉の脂の甘味と、ザラメの甘味が
絶妙に絡み合っていて。
美味しい~。幸せ。幾らでも
食べれちゃいそうにあります」

目を伏せて その余韻に浸る
彼女を様子から察するに

「そうか、君は
すき焼きが好きだったんだな」

「すき焼きのお店は、あちこちに
ありますけども…、ここのすき焼きは。
東京ではみりんを加えて予め合わせた
割り下を使う店が多いなかで、
関西風の、
ザラメと醤油と酒のみの味付けです。」

そこまで一息で言って
あげはが息継ぎをすると

「ザラメを使うとどうしても、
肉が焦げやすくなるので。
こうして、その給仕をする側にも
熟練された腕が必要とされますから。
それを絶妙に焦がさずに、
香ばしさを肉に持たせて仕上げるのは、
仲居である
三好小母さんの腕にありますから」


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