第37章 牛鍋とすき焼きと胸の外と内 前編
「この子なんて、
ここんとこなんて、寂しいもんでねぇ?
今が女の盛りだってぇのに、
そんな相手すらも、
全くなかったもんだったからさ。
だから、私も、アンタがそう言う事に
前向きになってくれて、嬉しいしさ」
「っ、…ちょ、三好小母さん…。
そう言う話は……、
あんまり、彼の前では」
「別にいいじゃないのさ。
アンタ程の別嬪が、
男のひとりやふたりも居ないで、
いい歳しといてだよ?
とうが立つ位の年齢にも、
なっといてさ。
男のひとつも知らないで、
余ってるって事の方が、
おかしいってもんだろ?」
「悪かったですね!
いい歳して余りもんで!
言い過ぎだから、失礼だから。
世の中の20過ぎた
独身女性に謝ってってば!」
「まぁ、そう怒るこたぁないさ。
今までアンタが誰とも結婚しないで、
余ってたから、こうして
こちらさんとの、良縁に恵まれたんだろ?」
「ははははは。確かに三好さんの
おっしゃる通りだ。
あげはさんが、
それだけ、誰から見ても、
魅力的な女性であると言う
何よりの、証拠でもあるからな!
俺からも今まで、あげはさんが、
独り身で居てくれた事を
感謝したい位ですから」
そう杏寿郎が言うと
爽やかな笑顔を浮かべた
「ううっ…、でも…。
杏寿郎さんが聞いて、
あまり気持ちのいい話では…」
「俺は、過去には捉われない。
それもひっくるめての君だからな」
あげはの過去の男性遍歴について
この三好と言う人は
細かく知って居そうな口ぶりだったで
俺がそれに気を悪くするのではないかと
そう心配したあげはが
三好の発言をたしなめて居たが
気にすることはないと俺が伝えると
今度はこちらに向けて
何とも申し訳なさそうな
訴えかける様な目であげはが
俺の顔を見て来るので
「(あまり、
気に病むな…あげは。
後にも先にも…
これからは俺だけだろう?)」
ぽそっと
それを気にしているであろう
あげはに対して
杏寿郎がそう耳打ちをして
杏寿郎のその言葉に
あげはがコクリと頷いて
同意を示して来る