第37章 牛鍋とすき焼きと胸の外と内 前編
「もう、だからぁ。
それに、問題があるので…って。
あ、あの…、杏寿郎?
私の話を、お聞きになって…って」
杏寿郎の視線を…
自分の胸に感じてしまって
あげはが言葉を濁してしまう
まじまじと胸に注がれている
杏寿郎の視線が自分の胸を這う様な
その感覚にどうにも
いたたまれない気持ちになって来る
その彼の視線に
服の下まで見透かされていて
まるで その視線に胸の形や
大きさを確かめられているかに感じて
彼に そうされている時の
記憶が鮮明に蘇って来て
脳の隅でちらつく
「あっ、あの…ッ。
み…、見ないで……下さいッ」
「だが、見ない事には。そうなのか
気のせいなのか、事の真相が
分からないだろう?
だが、こうして、服の上から
見ているだけではわからんな」
ニヤッと含みのあるような
笑顔を杏寿郎が浮かべて来て
その視線から自分の胸を
守る様にしてあげはが
自らの胸を両手で覆うと
「何故…隠す?あげは。
そう、隠されてしまうと…見えないが?」
「だって。
杏寿郎が見るからでしょう?
隠しもしますってっ、…あの、杏寿郎?」
スッとあげはが自分の胸に
被せている手の指先を
杏寿郎がつつーと指先で撫でて
その手を除ける様に急かして来る
「そう隠していたら、分からないだろう?
手を除けてくれると
助かるのだが?あげは」
私が自分の胸を覆っている
その手の上から杏寿郎が手を重ねて来て
ぐっと下から持ち上げる様にして
私の手毎 乳房を押し上げられてしまう
当然 自分の手で覆いきれない
部分には直接彼の手が触れるのだから
思わず ビクッとあげはの
身体が跳ねてしまった
「んっ…あの、ちょ、…ダメです。
……杏寿郎…、やっ…
ダメですから。杏寿郎?聞いて…。
その、…んっ、
いい加減にっ…しっ…、てッ」
ギュッと胸を押さえていた手の
真下に手を添えられて
下から強く 押し上げられると
思わず大きな声が漏れそうになって
その声を押さえて飲み込んだ