第5章 無限列車にて 前編
「君は、強いな」
「強くなって、周りの事何も
見えなくなるような強さなら
私はそんなの、要らないよ!強くなくってもいい。
私の目に映る所が、私の手の届く所だけでも
…守れたら…それでいい」
人 1人がいくら強くなろうと
完璧な存在にはなれないと
彼女は知っているんだ
そしてそれに強い弱いは関係なくて
きっと 彼女は…俺にはない強さを持っている
頭が上がらないな
「君には頭が上がらないな、
そうしなさいと言われたのではなく、
そうしたいと願っているのだから…」
「笑わないの?」
「なぜ、笑うのだ?君のしたい事だろう?」
「でも、優しいだけじゃ駄目だって、言われる…」
「誰にだ?」
「師範…に、剣士に向いてないって
…優しすぎるからって」
「俺は、君は強いと思うし。
剣士に向いていると思うぞ!」
「私は、強くなんかないよ。
迷って、立ち止まってばっかり」
「自分の弱さを認められる、それも君の強さだ」
可愛いの次は強いって
返されるやつなのだろうか?
「だが、…君のそんな所は、
ほったらかしになってしまうぞ?」
私のそんな所とは どんな所の事だろう?
「あるんだろう?君にも、弱い所が…。
君の理屈を借りるのであれば
それを放っては置けないことになるぞ?」
強い人の中にある 弱い部分…
「君は人には優しいが、自分には優しくないからな。
それは良くない、俺では、…役不足か?」
きっと この人は私の弱い所とか
自分の中にある 嫌な部分とか
そんなんとかも 全部 受け入れて
受け止めてくれるんだろうなぁ…
でも… そんな風にされたら 私は
1人じゃ歩けなくなる 1人じゃ立ってられなくなる
何も 出来ない子になってしまいそうで
弱い 弱い…私になってしまいそうで
そんな気がして 怖い…
それこそ この人が
私にとっての特別な存在になってしまうから
「君が俺に言ってる事も、
俺が君に言ってる事も同じだと思うが?」
私が 煉獄君のそう言う所を
そのままにして置けないのも
彼が 私のそう言う所を放って置けないのも
一緒 ってこと?
まだ 彼は 弱音らしい弱音も
漏らしてないと思うけど?
「役不足…って、私も役不足なのでは?」