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その恋は琥珀糖のような【鬼滅の刃】【煉獄/救済】

第5章 無限列車にて 前編


杏寿郎の視線の先にあげはの背中があった
俺はかれこれ3年 
柱としての責務を果たして来た
「あげは、君はどれくらい柱をしていた?」
「柱?えーっと、多分だけど、5年じゃないかな?」
それがどうしたと言いたげに
ざっくりとあげはが答えた

「君は、柱の先に求めるものがあったか?」
「柱の先に?別に何にもないけど?
柱じゃなくても、私がしたい事するのに、
関係ないって気がついただけ」

父上は柱であっても 
手に入らない何かに気付いて
柱だけでなく 剣士まで辞めてしまったのに
彼女は柱でなくても 自分のしたい事が
できると気がついた訳か

俺のしたい事は ずっと変わる事は無い
在りし日の母上が俺に残してくれた言葉

杏寿郎はいつかの病床の母親と
交わした会話を思い返していた
自分はなぜ 
人よりも強く生まれたのかと…問われた時のことを

ー弱き人を助ける事は 強く生まれた者の責務です
責任を持って果さなければならない 使命なのですー

俺は今日まで 
その母上の言葉を忘れる事なく 守ってきた
それは この先も
何があろうと 変わることはない

「ーーして、君のしたい事は、何なんだ?」
少しあげはは考え込んで 
何かを思い出している様だった
それから遠い目をしながら 懐かしむように
言葉を絞り出すように 静かに話始めた
「あの時の私は、…何もできなかった。
守られただけ、助けられただけ…。
もう、自分の目の前で…、誰かが死んだり、
傷ついたりするのは…見たくない」
彼女もまた 誰かに救われたのだな
守られる者から守る者になりたかったのか?

「弱き者を助けるのは、
強く生まれた者の責務だからな!」
「そんなの、違う…よ」

一瞬 言葉を失ってしまった
母の教えを否定され 
頭が真っ白になったからだ

「だったら、その強い人は誰が助けるの?
その強い人は助けてばっかりじゃない!
その人の事は…誰が助けて…あげられるの?
そのままでいいの?」

強い者が 弱い者を助ける 
当然の事だと…疑いもしなかった

「きっと、どんなに強い人の中にも
…弱い所はあるから。
だって…、人間なんだよ?
そんなに…強くなんてなれないよ」

あげはは…やはり 優しいな
この優しさは 弱さなんかじゃない
何物にも変え難い 美しさでもあり強さだ
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