第37章 牛鍋とすき焼きと胸の外と内 前編
どっちも同じじゃないのかと
杏寿郎は思いつつも
あげはが知っていると言う
すき焼きの店に向かったのまでは
良かったが…
「ここですよ。杏寿郎」
そうあげはが言って
ある一軒の店の前で
その歩みを止めた
その店の前まで来て
思った事があった
随分と 店構えが……立派だ
「あげは、ちょっとここはだな。
その、ふらっと昼に行く店では
ないんじゃないか?」
店の前で杏寿郎が
あげはに耳打ちをして来て
「え?でも、お昼の方が夜よりも
お手軽なお値段で、頂けますよ?
ですから…私も、
気が引けると言いましたのに。
それにお金の事でしたら、
お気になさらず。
折角ですから、両方頂くのも
いいかもしれませんね」
杏寿郎の心配を
気にしてない様子であげはがそう
返事を返して来て
「いや、その俺が言いたいのは
そこの事ではなくて。
予約も無しにいいのかと
そう言う意味でだな。
両方……と言うと?」
自分が心配してるのは
財布の中身の問題ではないと
杏寿郎があげはに言って来て
自分の中の問題視している
事を伝えて来る
「ああ、予約ですか?
多分お昼の時間なら、
なくても大丈夫かと。
こちらのお店は、すき焼きも牛鍋も
食べられる……事にありますよ。
うーん、でも、私の印象としては
すき焼きの方が、
上等なお肉を使う印象ですけど。
まぁ、入れば……わかりますよ。
入りましょう」
「あっ。あげは、待ってくれ」
「予約の事でしたら。
大丈夫ですよ、私も
予約しないで、来てるので」
そう言ってあげはが
その店構えに構う様子もなく
普通に入って行ってしまって
それもあげはは
ここに来た事があるのか?
その店構えに 気楽に入ってしまって
いいのかと躊躇いつつも
杏寿郎がそれに続いた
店構えも相当に立派だったが
中もそうだ
小料理屋……と言うよりは
この店は 料亭のそれに
近い格式の店の様だった