第36章 罪と罪 後編
そう 自問自答する
ドクン……ドクンと
自分の心臓が拍動する音が
鼓膜に直接…響くかの様に感じる
指先から熱が失われて行くかの様だ
寒いのに 頭と心臓だけが
焼けつくかのように熱く感じる
彼の事を 知れば知る程に
三上透真と言う人物が見えて来る
俺はまだ 彼には到底 届いてないのだと
自分の未熟さを… 現実を
突きつけられているかの様だ
いや 違うな…
そう思った時に 不意に気が付いて
気が付いて しまったんだ
そうか…彼には それを望む事すらが…
出来なかったんだ……と
気が付いて 気が付かなければ良かったと
瞬時に後悔してしまった
そして 俺がそれに気が付いた様に
彼女もまた
それに気がついて居た様だった
「そう……、でしたか…。
そう、だったのですね。私は……
ずっと彼に……守られて、
いたの…ですね…。ずっと彼に…」
あげはが俯いて
胸の前でぎゅっと拳を握る
その顔は浮かない影を落としていた
だが この
真実を知って…
この場で泣き崩れてしまわないのも
また 彼女の
あげはの強さ…でもあるが
動揺をここまで外に出さずに
押し殺せるのも…
素晴らしい 精神ではあるが
その感情を…
押し殺して欲しくはない…な
俺の前では…特に
いっそのこと
この場で嗚咽しながらでも
泣き崩れくれたのなら
その身体を人目を気にもせずに
引き寄せて抱きしめてもやれる物を
やはり…… 彼女は 強いな
頑な……と言う方が合うか
「だが、彼がそうしたのは…
君の為ではあるが……が、
君の所為ではない。そこを君は、
勘違いをするな。あげは。
君は……物事を、そう自罰的に
捉えすぎてしまう傾向があるからな」
そう杏寿郎が言って来て
私の考えている事が
彼には全て分かっているのだろう
私が自分が悪いと
自分の所為だとそう捉えてしまう事も
彼にはお見通しの様だった