第36章 罪と罪 後編
驚いた
この2人は 私を許す…と
そう言うのか…
許すばかりではなく その私の罪までも
共に背負ってくれると
そう 私に申し出てくれるのか…
嗚呼… 何という
慈悲深い……慈しみの心に
この二人は 満ち満ちているのだろか
嗚呼…… 何と 素晴らしき事か……
その4年前の私には受け入れる事が
到底叶わなかった事を…
彼等は……私の代わりに
叶えてくれるとそう申し出て来るのか
嗚呼 そうか こんなにも…
強く……なれる物なのだな……
人と言う物は…
それを成せるのも また……
愛ゆえに…とでも
言うべきなのであろうか
自分の両の手で数珠を
ジャラジャラと擦り合わせていた
その手を 止めて
悲鳴嶼がふっと口の端をあげる
「今の…君達になら……話せる……か」
自分には…… 出来なかった
その彼の望みを…
彼等があげは達が叶えてくれるのか…
「あの…、彼の依頼は…、
彼は透真さんは何を、悲鳴嶼さんに
頼もうとしていたのですか?」
ジャラジャラと数珠をすり合わせていた
悲鳴嶼がその手を止めて
「彼が、私に依頼をして来たのは……、
私に、自分を…、
殺して欲しい……と言う物だった」
「…ーーーーッ!」
一瞬 言葉を失ってしまった
自分を殺して欲しい…
その願いが ぐるぐると頭の中で回って
何度も繰り返される
殺して……欲しいと
そう願う 彼の願いが
彼の声で 私の頭の中で 響くかの様に……
ー『ねぇ、行冥。お願いがあるんだ。
僕が僕である内に、君に…
僕を、殺して貰えないかなって。
ごめんね。行冥。
こんなお願いをしちゃって……』ー
その日の彼の笑顔を
悲鳴嶼は思い返していた
目には映らないが
彼からは いつも 日向の様な
そんな暖かで
穏やかなそんな気配を感じていた
だが…… その日の彼は……
その笑顔の下に悲しみを隠して
その言葉の裏で 私に遠慮していた
ー『でも、……君にしか頼めないんだ。
僕には…、それが出来ないから…』ー