第36章 罪と罪 後編
自覚も…何も……
私は 聞かれた事に
答えただけ…なのに?
スルッと杏寿郎の手が
あげはの頬に触れて
そのまま そっと唇が重なる
両頬に手を添えられたままで
唇を離すと
お互いの視線がぶつかった
「………あげは。
全く、君と言うのは。
俺を、どうするつもりだ…?
凄い、殺し文句だな……、そんな事を
俺に言ってしまっていいのか…?
やはり、君は毒みたいだな。
君の言葉はこれほどまでに、
俺を強く…急き立てるのだからな…」
「どうもこもうも……
ありません事ですよ?
私は、杏寿郎をどうこうするつもりで
言った訳ではありませんし。
それに……事実を…
そのままお伝えしたまで…で」
事実をそのまま 伝えただけだと
そう あげはが俺に言って来て……
分かっていて自覚があって
言ってるのか いないのか…
「あの、……杏寿郎?」
当の本人は 俺を煽っている自覚が
全くの皆無らしく
キョトンとしながら こちらの顔を見ていて
「君は…、罪作りな女だな。全く。
俺にだけ…に、してくれるか?」
何だろうな 今日の杏寿郎は
どうして こうも やたらに
口説いてくるんだろう?
「あの…、杏寿郎……?
もう、私は杏寿郎の…ですので。
そんな、改めて口説いて頂かずとも…。
私は、貴方の……」
その言葉の先を紡ぐのを
杏寿郎の手で口を塞がれてしまって
阻まれてしまう
「んっ、…むぐっ……」
「君はあまり、普段は素直じゃないが。
素直に言葉を君に尽くされると…
俺の理性が効かなくなってしまうからな」
そのまま 杏寿郎に
手で口を塞がれたままで 今度は
後ろから包むようにして抱きしめられて
隊服の襟の留め具を口を塞いだままで
空いている方の手で外すと
グイっと襟を後ろに
軽くすかされてしまって
「……!?」
一体 何を彼がするつもりなのか
理解が出来ずに
思わず 身体を固くしてしまった