第36章 罪と罪 後編
そんな 彼女に
こんな申し出をして
あわよくば あげはが
首を縦に振ってくれるのではないかと
そう期待をしてしまっている
彼女の性分を理解していて
断らせない言い方で
それを求めてしまっている俺は
卑怯な上に更に
ズルい男…なのかも 知れないが
ダメだと分かって居ながらに
欲張って 彼女を もっとと
こんな時期である時にも
求めてしまって居るのだから
どうしようもない男だな 俺も
「い…今は……ッダメです、ここじゃ…」
困らせてしまっていた様で
若干彼女の目が潤んでいたから
強引にそうしてしまったら
それこそ あげはに
泣かれてしまうかも知れないが……
「そうか、ここでは
ダメだと君が言うのなら
仕方ないな。なら…夜ならいいか?」
「え…でも、まだ…その…
応えられない状態…でありますよ?」
そう不安そうにしながらも
彼女がいいのかと念を押して来て
「何も…、俺も
最後まで望んではいないが。
それとも何か?ほんの少しの戯れも
君は俺には…、許してくれないのか?」
でも…いくら最後までは
しない…とは 言っても
そんな事ばかりしてたら
余計にお互いの熱を拗らせるだけなのに
彼はそれを知ってて
そう 言って来るのだろうか?
「俺に許される範囲の最大限を…、
欲張りたい…のだが?あげは。
俺に…、今夜、その権利をくれないか?」
「許されるも何も…、それに
最小限でも最大限であっても、
私がそれを…、許すのは…
杏寿郎にだけ…にありますよ?」
「…ーーなっ!?」
あげはの言葉に杏寿郎が
驚いた様子で目を見開く
それから即座に何かを言おうとして
それを押し留めると押さえ込むかの様に
左手で自分の口を塞いで目を閉じると
右手を上に上げてパタパタと仰いだ
「杏寿郎?一体
何をなさっておいでです?」
ずいっと杏寿郎が距離を詰めて来て
「君は、今、自分が何を言ったか
自覚があるのか?」
「杏…寿郎?自覚…にありますか?」