第36章 罪と罪 後編
「ですからっ。杏寿郎……ダメって。
何度も言ってるのにぃ。
やっ、…これから人に、会いに……
んんっ、行くのでしょう?」
「だが……、折角、一時の猶予があるんだ…。
そうなってしまっても、俺は大丈夫だと
思うがな?そうなってしまったら、
ここでしばらく休んでから出ればいい…」
そうなってしまったら……と
彼は言ってるけど
きっと それは そうなってしまったら
なんかじゃなくって
そうしてしまうから……のっ
間違いなんじゃないかって…
「俺は…、そうしてしまいたいと
そう思って居るが……、君はどうだ?
俺に、そうされたいと言う、
募りはないのか?」
いや そうしてしまうからじゃなくて
そうしたい……の間違いだったのか……
けど そうしてしまったら
杏寿郎は…… ?
「んぅ、でもっ…杏寿郎は…その、
中途半端…になってしまうのでは?」
「その時は…、なんとかすれば
いいだけの事じゃないのか?
それともまた、あの時みたいな
手伝いを申し出てくれるのか?」
そう言いながらも
少しずつ…膝の間から
じわじわと彼の足が
入って来るのを感じるから
「んっ、やっ…ダメ、杏寿郎…」
「だったら、これはあの時のお礼だ。
俺だけ…そうなるのは、良くないからな。
あげは。君がそうなるのを今度は、
俺が手伝いたいのだが?」
前に 私が杏寿郎を
手伝ったから…?
今度は自分が手伝いたいと
そう杏寿郎が申し出て来て
自分がした事に対してのお礼…と
そう言われてしまっては
断るに 断れ……ないでいて
杏寿郎に対する返答を迷っていると
自分の前の彼女は
頬を染めたままで俺への返答を
悩んでいる様だった
生真面目な性格をしている
彼女の事だ
これから人と会うのに
そんな事をと考えているだろうし
だからと言って
俺があの時のお礼をしたいと
お返しをしたいと そう申し出れば
ないがしろには出来まい…
それを理解して
言ってるのだから 俺も
少々…卑怯なのかも知れないが…